大みそかの「第65回紅白歌合戦」は、初出場組以外にも話題のアーチストが顔をそろえる。サッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会のNHK放送テーマ曲「NIPPON」を歌った椎名林檎さんも、そのひとりだ。
W杯という話題性やNHKに貢献した点を考えると、本番ではこの曲を歌うのが順当だと思える。ただ以前、その歌詞の内容が「右翼的だ」と批判されていた。あえて別の曲を選ぶ可能性はあるだろうか。
「右翼的」との批判に「全然そんなことは書こうと思ってない」
椎名さんの紅白出場は、今回で2回目。初出場だった2011年は「カーネーション」「女の子は誰でも」をメドレーで歌った。「カーネーション」は、この年のNHK連続テレビ小説の主題歌として使われ、話題を集めた。
2014年の椎名さんのヒット曲と言えば、NHKでサッカーW杯の試合やダイジェストが放送されるたびに流された「NIPPON」が思い浮かぶだろう。ところが、この曲が論争を巻き起こしたのは記憶に新しい。プロモーションビデオの冒頭にはためく日の丸や、歌詞の内容が「純血性」や「特攻隊を思わせる」意味深さがある「右翼的」応援歌だと、7月4日付の「週刊朝日」が指摘したのだ。インターネット上でも賛否分かれていろいろな意見が交わされた。
椎名さんは、11月17日付のネットニュース「ウィズニュース」で、この騒動に触れている。「いま大戦中でもないのに、人に『どっちなんだ!? 右なのか、左なのか』と問うこと自体、ナンセンスだとは思います」と主張。批判については「ちょっと文脈がズレてると思うんです......一つの曲としても全然そんなことは書こうと思ってないから」と一蹴した。
日の丸のデザインを使ったり、拡声機を使ってパフォーマンスしたりするのが「右翼的だ」と言われる点にも、「とにかく、否定する材料を探したいんでしょうね。色々言おうと思えば言える材料がたまたまそろっているから、面白おかしくおっしゃりたいんじゃないでしょうか」と強調、自身の表現の一環であり偏った思想的要素はないと言いたかったようだ。
特攻隊を美化したいならもっとやり方があるはずと反論
「特攻隊を思わせる」との指摘についても、「全然考えてもみませんでした」。仮に特攻隊を美化したいなら、もっとやり方があると思うと反論している。指摘の発端となった「淡い死の匂い」という歌詞も、「『死に物狂い』という体験をしたことがある方にとっては、別に何てことのない、素通りするような表現ですよね」と、批判が理解できないようだった。
記事では、最新アルバムについても語っている。タイトルが「日出処(ひいずるところ)」なのは、「NIPPON」での騒動を逆手にとったのかとの問いに、「そういう風にお思いになる方がいても、おかしくないなとは思うんですけどね」とやんわり否定。「メーン・ストリート、目抜き通りを闊歩したいと願っている人物の、色んな瞬間を切り取った曲たち」というストーリーを描きたかった、だから「目抜き通り」「陽の当たる場所」でもよかったが、想起してもらいたいイメージと違うと考えた末、「日出処」に決まったと明かした。
椎名さんにしてみれば、「右翼」「愛国」といった指摘は全く的外れだというわけだ。ただアルバムのジャケットは、旭日旗を連想される絵柄が用いられている。韓国ではツイッターで疑問の声が上がっているようだ。
紅白歌合戦は今も視聴率40%を超え、海外にも広く中継されている番組だ。NHKは「外野の声」や勘繰りを気にせず、今年の代表曲である「NIPPON」を選ぶだろうか。