「デフレとの戦い」には逆風に
減産見送りと原油価格下落に、日本では歓迎の声が上がる。宮沢洋一経済産業相は11月28日の閣議後会見で「(原油の)価格が上がらないことは我が国にとってありがたい」と話した。
7月に1リットル当たり169.9円まで上がった国内のレギュラーガソリン価格も、11月25日時点では、158.3円まで安くなっているが、原油値下がりで下落が続くとみる専門家は多い。冬の需要期を迎える灯油も安くなりそうだ。火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)の価格も原油価格に連動するので、今後は電気料金が下がる期待もある。みずほ総研の試算では、約20%の原油安は日本の2015年の国内総生産(GDP)を0.5%押し上げる効果があるという。
ただし、OPEC総会後にロシアの通貨ルーブルが急落するなど原油などの相場下落が資源国の経済混乱につながりかねないことは注意が必要だ。
また、原油価格の下落は、日本や欧州の中央銀行が取り組む「デフレ(物価下落)との戦い」には逆風になるという警戒感もある。10月に追加緩和を決めた日銀の黒田東彦総裁は「物価下押し圧力が残存する場合、着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するおそれがある」と述べていた。原油安で、デフレからの脱却が振出しに戻りかねないという指摘も出始めている。
一国の中央銀行総裁が、企業業績の改善や個人消費の活性化につながる原油安を喜べないという不思議な事態になっているわけで、「これこそ、デフレ脱出がいかに大変かを象徴するもの」(エコノミスト)といえそうだ。