一種の「チキンレース」
財政問題以上にサウジをして、頑なに「減産拒否」させたのは、米シェールオイルの存在だ。最近の原油相場の下落は、欧州や中国など新興国の景気減速による需要の伸び悩みもさることながら、米国を中心に、頁岩(シェール)層から石油やガスを取り出す技術開発によるシェールオイルの生産増という「構造要因」があり、その結果、需給が趨勢的に緩んでいるのだ。サウジなどは、OPECが減産して一時的に価格を押し上げても、かえって米シェールオイルの増産を招き、結局シェアを失うだけと考え、減産に首を縦に振らなかったのだ。
これは、一種の「チキンレース」に例えられる。サウジは原油安を放置すれば自国の収入が減るものの、「価格が低くなることでシェールオイル開発への投資をしにくくし、シェアを守りたいという思惑がある」(アナリスト)。実際、OPEC総会後の米株式市場では個人消費の拡大期待から小売株などが上昇した一方、原油安が資源開発事業の足かせになるとの懸念から、石油関連株は軒並み下げた。
米シェールオイル業界も、順調にシェアを伸ばしてOPECの牙城を突き崩したはいいが、OPECの力の低下による価格下落は痛しかゆしということになる。サウジなどにしても、民主化要求運動「アラブの春」の波及を食い止めようと国民の不満を解消するための巨額の財政支出を続ける以上、原油安による収入減少は打撃には違いない。いずれにせよ、息の長い我慢比べが続くことになりそうだ。