2014年流行語大賞の2語を並べると「ダメよ~ダメダメ 集団的自衛権」と読めることが、ネット上で物議を醸している。「集団的自衛権」の受賞を辞退した対象者は、そのことを嫌ったとの憶測さえ出ているほどだ。
流行語大賞は、「現代用語の基礎知識」発行元の自由国民社の事務局で手がけ、7人の選考委員で年間大賞などを選んでいる。「ダメよ~ダメダメ」で大賞になったお笑いコンビ「日本エレキテル連合」は、元々のネタには政治的意図などはない。
選考委員「2つの言葉が並ぶと一定の意味」
ところが、流行語大賞サイトに載せられた解説では、政治的な意味が書かれていた。
そこではまず、日本人は相変わらず、はっきりとNOと言えないとし、そのユルい空気からリベンジポルノやセクハラやじが出てくると指摘した。そして、次のように集団的自衛権について否定的なコメントをした。
「あげくの果てが『壊憲』と言われる7月の閣議決定。『ダメよ~ダメダメ』と高まる声を前にして、『いいじゃ~ないの~』とするすると受け流して、気がついたら憲法が解釈だけで変更されてしまった」
そんな日本の現実を大爆笑に変えてくれたのが、この「シュールなコント」だというのだ。
同時に大賞になった「集団的自衛権」についても、かなり厳しい解説になっていた。違憲とされていたのがいきなり行使可能になったのは「大事件」だとし、「いくらアベさんに説明されてももう一つはっきりしないままの状況が続いた」「『集団』と『自衛権』をつなぐ『的』がどこか煙にまくような機能を果たしている」とまで言っている。
報道によると、選考委員をした漫画家のやくみつるさんは、「審査は中立な立場で行った」としながらも、「大賞となった2つの言葉が並ぶと一定の意味をなす。興味深い」と政治的意味があるかのようなコメントをしていた。
「政治的意図については全然ありません」
流行語大賞については、その結果を自らの主張に利用する政治家も現れた。
社民党の福島みずほ参院議員は、ツイッターで結果について触れ、「集団的自衛権が時代を象徴するとは、大変なこと!」「選挙の大きな争点は、違憲の集団的自衛権の行使を認めるかどうかだ」と訴えた。大賞の2語を並べると政治的な意味になるとして、「どう考えてもダメです。ダメなものはダメ」と揶揄した。
一方、自民党の佐藤正久参院議員はツイッターで、発表会場にいた人から一部の選考委員が「集団的自衛権は ダメよぉダメダメ」と茶化したと聞いたとして、「元自衛官としても、安保法制議論に参加した議員としては、この茶化しに怒りを覚える」とした。そして、「選挙戦での利用の可能性も否定できない。その場合、エレキテル連合が『政治利用』されて気の毒だ」と漏らしていた。
ネット上でも、疑問や批判の声が上がっている。「集団的自衛権が流行語とか凄い違和感があるなあ」「恣意的すぎて、もうね」「つなげたらサヨクまるだし」と、政治的意図についていぶかる向きが多い。
受賞を辞退した対象者について、事務局では「公表しません」としているが、どうやら安倍晋三首相らしい。選考委員を務めた「現代用語の基礎知識」の清水均編集長が「昨年トップ10入りした『アベノミクス』でも辞退されたあの方の顔を拝見することができなかった」と述べていたからだ。
安倍首相の国会事務所に受賞の打診があったかについて聞くと、秘書は「こちらでは分かりません」といい、結果についてどう思うかについても「官邸に聞いて下さい」と答えた。首相官邸の総理大臣秘書官付室でも、取材に対し、「上の方には打診が来ているかもしれませんが、下の方では分からないです」などと話すだけだった。
自由国民社の事務局では、集団的自衛権を選んだ政治的意図について「全然ありません」と否定し、並べることを考えて大賞の2語を選んだわけではなく、「たまたまそうなっただけです」と取材に答えた。