未来を夢見るミュージシャンにとって、路上ライブは大切な舞台だ。ゆずやコブクロ、川嶋あいさんなど第1線で輝く彼らも、もともとは路上で多くの支持を集め、スターへの階段を上ったミュージシャンと言えるだろう。
そんな中、「池袋で頑張っている路上アーティストたち、気を付けて下さい」と、あるミュージシャンがブログに書いた警告が波紋を広げている。
「池袋での路上ライブを根絶させようとしているようです」
ブログを投稿したのはシンガーソングライターの小関峻さん。「池袋で路上ライブを始めて2年半。初めて警察署に連れていかれました」という。「普通に路上ライブをしていただけ」(小関さん)なのに、私服警官が数人やってきて、車に乗せられ警察署まで連れていかれたというのだ。
結果としては「厳重注意」を受けただけで、罰金などが科せられた訳ではない。しかし、警官から聞いた話だとして、「今後は一発罰金や懲役の可能性もあるとのことです」という。また、警察が取り締まりを強化して「池袋での路上ライブを根絶させようとしているようです」と主張。「俺はもう池袋では当分は歌えそうにありません。こんな形で今日が池袋のラスト路上ライブになってしまったのはとても悲しいし、残念です」とつづっている。
このブログは路上ミュージシャンやそのファンたちに拡散し、「もはや他人事ではないし...気をつけましょう」「池袋路上もだめとなるとそろそろマイナーな駅で始めるしかないかなぁー」「こういう場所がなくなるのはすごく残念」など、反響を呼んだ。
実際に池袋駅周辺で、路上ライブを行うミュージシャンは多い。池袋の大学に通う学生によると「西口や東口あたりで、ライブの行われていない日はありません」というほどだ。また、「この前、アンプにつないでギターを演奏していた2人組の男女が警察に注意を受けていました」とも語る。駅周辺では、ミュージシャンが警官から注意を受けることは決してめずらしくないようだ。
無許可の路上ライブは明確な違法行為
言うまでもなく、無許可の路上ライブは違法行為だ。道路の使用に関する道路交通法第77条は、所轄警察署長の許可を得ずに、道路を使用したり交通に影響をおよぼしたりする行為を禁じている。違反した場合は3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる。自治体によっては騒音を規制する条例などに抵触する場合もありうる。
しかし、路上ライブを行ったことがある男性は「きちんと許可を取っている人はほとんどいない」と話す。許可を得ている人もいない訳ではないが、「9割近くが無許可だと思う」という。この男性自身も警察から注意を受けたことは複数回あるという。
とはいえ、小関さんが言うように、警察が「路上ライブを根絶」しようとしているかどうかは分からない。警視庁や池袋署が路上ライブの根絶や取り締まり強化方針を発表した訳ではないようだ。ある警察関係者は「基本的には口頭の注意がほとんどです」と話している。
また、路上ライブ自体に「興味ない人にとっちゃただの迷惑なのかな」「本当に邪魔だからやめてほしい。ライブハウスでやればよい」と否定的な見方もある。小関さん自身、「自分のしていることが正しいとも思いません。路上アーティストもマナーを守って、出来る限り迷惑をかけないよう気を付けて、共存できたらと思ってます」としている。