「危険ドラッグ」原料のほとんどは中国から密輸 NHK特集に闇の流通握る中国の女が登場

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   「危険ドラッグ」の原料のほとんどが中国から密輸されている実態を、NHKスペシャルが4か月にわたる取材で示した。そこには、取引のカギを握る人物がいたというのだ。

   規制すれば、化学構造の一部を変えてまた違う「危険ドラッグ」を流通させる。なぜそんな高度なイタチゴッコができるのか、その秘密は原料の製造元にあったらしい。

中国からの原料の荷物に送り主の名前

NHKサイトでも、放送を紹介
NHKサイトでも、放送を紹介

   読売新聞の2014年11月26日付記事などによると、警視庁は、国内に出回っている危険ドラッグのほとんどの原料が中国から調達されているとみている。NHKスペシャルは30日、「攻防 危険ドラッグ 闇のチャイナルートを追う」とのタイトルでその真相に迫った。

   NHKの取材班は、ドラッグ販売のホームページにあったという化学メーカーの住所を頼りに、中国で十数か所を訪ねた。しかし、いずれの場所もただの住宅地になっているなど、何も存在しなかったという。化学メーカーが頻繁に社名や住所を変えていることもあるとみられ、結局、所在は分からなかった。

   中国の化学メーカーの事情に詳しい日本人に取材したところ、あるメーカーは、日本の販売業者のうち3分の1に原料を供給していると明かした。違法になればすぐに品を変えてくるので、その分値段も高いという。NHKは、秘密工場の写真も入手し、化学物質を合成する「化学反応器」が6台もあることを紹介した。ほかの写真では、化学反応で発生したガスを排気するダクトも示され、これは工場に張り巡らされているそうだ。

   この工場がどこにあるかなどは分からなかったが、NHKでは、10月になって重要な手がかりを得た。それは、那覇市内のマンションの一室で大量の危険ドラッグが見つかった事件で、中国からの原料の荷物に送り主の名前が書かれていたことだった。

「ポルシェを買って」「別荘買って」と要求

   通称で「リン」と呼ばれている中国の女で、ほとんどの荷物に同じ名前があった。この女については、マトリと呼ばれる厚労省の麻薬取締部でも、国際取引に関わる重要人物としてマークしていた。

   そして、NHKの取材班は、リンが関わる化学メーカーの拠点が中国の北部にあることを突き止めた。繁華街の高級ナイトクラブで行われている原料の商談にも、潜入することに成功した。

   そこでは、中国の化学メーカー幹部と日本の業者らが密会しており、日本語のできるリンが商談を取り仕切っていた。規制をすり抜ける化学物質の話し合いが行われた後、最後はお金の話で盛り上がった。

「ポルシェを買ってもらいたい」「別荘買ってほしい」

   リンがこう関係者に求めると、この関係者は、1億8000万円の別荘でも、ひと月でそのくらい稼げると豪語していた。

   NHKがリンに直接取材し、日本で深刻な被害が相次ぐ現状を伝えると、リンはこう反論したという。

「この仕事は、すでに産業として成り立っている。これで皆が豊かになった。私たちは、合法なものしか作っていない」

   厚労省研究班の推計によると、危険ドラッグの使用者は日本で40万人いるとされ、わずか数年で覚せい剤に匹敵する規模にまで広がった。その背景に、原料の最大の供給源になっている中国の化学メーカーがあるわけだ。

   摘発強化で販売業者の数は激減したものの、水面下で販売が続けられている模様だ。新しい化合物が出るたびに、毒性が強くなっているといい、14年はすでに前年の10倍以上に当たる100人超の死亡者が出ている。

   放送内容などについてさらに聞こうと、NHKが密着取材した厚労省関東信越厚生局の麻薬取締部に聞くと、「NHKの独自取材ですので、こちらでは承知しておらず、コメントのしようがないです。中国のことについても、警視庁が密輸で摘発したのが数件と少ないので、お話できるほどのものはありません」と答えた。

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