適量の酒で「死亡リスク」が低くなる
このように酒の「適量」が定められている背景には、飲酒量と死亡率の相関関係を調べた疫学調査の結果があるからだ。なかでも、米国保健科学協議会が各国の研究機関等の研究報告を分析したレポート(1993年)によって、適量の酒を飲む人は、全く飲まない人や多量に飲む人に比べ、最も死亡率が低いという考え方が広まった。グラフの形が似ていることから「Jカーブ効果」と呼ばれている。
滋賀医科大学の報告(2006年)によると、日本でもアルコール摂取量と総死亡リスクとの間に、Jカーブ減少が見られたという。この研究で、最も総死亡リスクが低かったのは、1日のアルコール摂取量9~12gのグループだった。また、総死亡に対して予防的に作用するアルコール摂取量の上限は、1日あたり42~72gのグループだという結果も出た。これは、アルコールが血中の善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを抑えたことで、心筋梗塞や狭心症などの予防に役立ったと考えられている。
個人差はあるにしても、適度な酒はコミュニケーションを円滑にしたり、緊張やストレスを和らげたりするのだろう。もっとも、ほどほどの酒は「百薬の長」となり健康長寿につながるが、酒席の言動によっては「諸悪の根源」にもなりかねない。酒席では雰囲気を大切にしながら、ほろ酔い程度に楽しむのがよさそうだ。
[アンチエイジング医師団 取材TEAM/監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]
アンチエイジング医師団
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