中華料理チェーンの「日高屋」を展開するハイデイ日高が、仕事帰りのサラリーマンに人気で、業績を伸ばしている。
軽く飲める「ちょい飲み」がブームになりつつあり、牛丼チェーン大手の吉野家やファミリーレストランなども力を入れているところ。日高屋は「ちょい飲み」の先がけといえそうだ。
ビールで乾杯、餃子をおつまみに中華そばでシメる!
そもそもはラーメン店だった日高屋だが、現在はラーメンをメインに置きつつ、ビールや、そのおつまみに餃子やレバニラ炒めなどの簡単な料理をメニューにそろえた「熱烈 中華食堂」として売り出し中だ。
「安さと気軽さ」が売りで、たとえば看板メニューの「中華そば」は390円。2014年4月の消費増税後も、価格を据え置いた。人気の餃子(1皿6個)は210円、生ビールも310円という安さ。ビール1杯に、餃子をつまんでラーメンで締めても、1000円にもならない。
さらに、もうちょっとお腹を満たしたい人のため、野菜炒め(410円)やチャーハン(420円)などの食事メニューや、唐揚げ(290円)や韓国キムチ(170円)といったおつまみメニューもそろえ、飲み物もビールのほか、ハイボール(270円)や酎ハイ(250円)を用意する。
そんな日高屋は、首都圏に357か店(2014年10月末時点)を構える。店の多くは駅前、しかも1階という立地で、「誰もが気軽に立ち寄れる店」をコンセプトにしている。
居酒屋のような、お通しや席料がないので、サラリーマンが職場の仲間らと仕事帰りに気軽に立ち寄り、1人1500~2000円もあれば十分楽しく「ちょい飲み」できる。サラリーマンに「やさしい」のがウケている理由のようだ。
外食業の多くは、消費増税分の転嫁と、人件費や材料費の高騰といった店舗運営コストの上昇による料理メニューの相次ぐ値上げで、どこも客足が遠のき、売り上げが伸びずに苦しんでいる。
そうしたなか、ハイデイ日高の2014年3~8月期(同社は2月期決算)の売上高は、既存店ベースで前年同期と比べて1.4%増えた。全店ベースではじつに8.1%もの増加。客数は3月と6月の除く毎月、前年実績を上回る0.2%増とプラスを確保。全店ベースではこちらも6.8%増と大きく伸ばしている。
直近の10月をみても売上高が4.0%増、客数は3.4%増、客単価は0.6%増(いずれも既存店ベース)と、その勢いは衰えていない。
2014年3~8月期決算(単独)は、四半期純利益が前年同期比4.8%増の12億8000万円。売上高は8.0%増の171億800万円、営業利益は5.4%増の21億6200万円の、増収増益だった。
アルコール飲料の売り上げが収益性に結びつく
どうやら日高屋の好調ぶりが、「ちょい飲み」ニーズを取り込んだことにあるのは間違いないようだ。
一般に、居酒屋などはアルコール飲料こそが「儲けの源泉」といわれる。原価率が低く、購買点数が多くなりやすいためで、アルコール飲料の売り上げがそのまま店舗の収益性に結びつく。
日高屋をけん引するのもアルコール飲料。中華料理店などの売り上げに占めるアルコール飲料の割合は3%ほどとされるが、ハイデイ日高によると、日高屋のそれは14~15%にものぼるという。
「(ちょい飲みは)日高屋の特徴であり、そのスタイルを変えたことはありません。おそらく、中華とお酒の相性のよさがあるのだと思います」と話す。売り上げも、「最近少し伸びたかな、といった感じです」とのことだ。
経営コンサルタントの大関暁夫氏は、「日高屋はメニューに、ビールにあったおつまみを用意するなど、『ちょい飲み』ニーズを捉えるのが早かった。いわば、火付け役ですね。その分、先行メリットが大きいといえます」と、好調の要因を話す。
加えて、「そもそも、低価格のメニューで多店舗展開する外食チェーンは、経営がむずかしい。以前、神田正社長(現会長)がインタビューで、『適当においしく、適当に安いのが成功のヒケツ』と話していました。何事も過剰にならず、多少のコスト増を吸収できる余地をつくっておく経営ということを表したのだと思います」。大関氏は日高屋の強さがそこにあるとみている。