黒田総裁が追加緩和の議案を提案、反対派を押し切った
再増税に対する考え方は正反対ながら、鈍化した物価上昇ペースを再び加速させるという目的では一致する正副総裁は、10月末の金融政策決定会合で追加緩和への議論を主導した。日銀が11月25日に公表した会合の議事要旨からは、追加緩和を主張する委員らが「ここで政策対応を行わなければ、日銀に対する信認が損なわれる」と迫り、黒田総裁が追加緩和の議案を提案、反対派を押し切った様子が浮かび上がる。日銀幹部は「正副総裁の間で意見の相違が生じないよう入念な事前調整が行われた」と打ち明ける。
一方、議事要旨には、反対派の審議委員らが追加緩和の副作用として、円安による中小企業の負担増や市場に「財政赤字の穴埋め」と受け取られるリスクなどを指摘し、4時間以上にわたって激論が交わされたことも記されている。追加緩和は正副総裁3人を含む賛成5人、反対4人の薄氷の差で決定されたが、審議委員の中でさえ追加緩和への評価が真っ二つに割れていることが白日のもとにさらされた。財政再建や大規模な金融緩和に対する考え方は執行部や審議委員の間で大きな開きがあるのが実態で、黒田総裁の今後のかじ取りは一段と難しくなりそうだ。