プロ野球2014年のMVPは首をかしげる選考だった。
セ・リーグは候補者が見当たらなかったし、パ・リーグは優勝チームの有力選手が落選...。
21世紀になってからパの新人王はすべて投手
表彰選手のメーンイベントがMVPと新人王。野球担当5年以上の記者の投票によるもので、ベストナインとともに2014年11月26日に発表された。
MVP=セ・リーグ菅野智之(巨人) パ・リーグ金子千尋(オリックス)
新人王=セ・リーグ大瀬良大地(広島) パ・リーグ石川歩(ロッテ)
MVP、新人王ともすべて投手が受賞。このケースは数少ない。1999年のMVP・野口(中日)工藤(ダイエー)新人王・上原(巨人)松坂(西武)以来である。
今年のMVPはシーズン終了後から注目されていた。だれになるか、と。MVPはペナントレースの成績から選ぶもので、第一の条件に「優勝に貢献」がある。
菅野はリーグ優勝に貢献している。有効投票数267のうち1位得票201。2位山田(ヤクルト)の21票に大差をつけた。
一方の金子は優勝を逃したものの個人成績を重視されて、有効投票数243のうち125票を獲得。2位柳田(ソフトバンク)は39票だった。
優勝に貢献、優れた個人成績と理由はつく。しかし、今年の場合は、セ・リーグが消去法だったのに対し、パ・リーグは優勝貢献より個人成績優先という感じが否めない。
選ばれた二人は、成績は差があるけれども、ともに「故障持ち」という共通事情がある。
ちなみに新人王は投手が圧倒的に多く、21世紀になってからパ・リーグはすべて投手。セ・リーグでは野手が5人。両リーグ投手は今年で9度を数えた。
ライバルが見当たらなかった
菅野は防御率1位のタイトルを取ったものの、12勝(5敗)はセ・リーグの歴代MVPの先発投手受賞者では最も少ない勝利数だ。パ・リーグでは99年の工藤の11勝がある。試合数23も少ない。しかもシーズン中に1か月以上も戦列を外れた。
現実は、ライバルが見当たらなかった。他チームでは阪神勢のメッセンジャー(1位投票3位)、ゴメスらが目立った。セ・リーグは、シーズン60本塁打の新記録をつくった昨年のバレンティン(ヤクルト)の例があるから、山田も含め他チーム選手は無理だったといえるだろう。
巨人の中にはもっとライバルがいなかった。投手陣は菅野以外で2ケタ勝利を挙げたのは杉内(10勝)のみ。打者も打率3割をマークした選手はいなかった。
候補といえたのは抑え投手で30セーブのマシソン。打者では全144試合に出場し、2割7分9厘、61打点、23盗塁の坂本。この両選手ぐらいだった。坂本が3割を打っていればいい勝負になったと思う。
パ・リーグ優勝のソフトバンクの柳田が選ばれなかったのは気の毒としかいいようがない。フル出場し、3割1分7厘、91得点、15本塁打、70打点、33盗塁。文句なしの成績である。毎試合出てこれだけの活躍。思い切りのいいスイングと飛距離は、久しぶりに出現した「入場料を払って見たい選手」だ。
金子は最多勝、防御率1位のタイトルを獲得。立派な成績だが、奪三振も取って投手三冠王を手中にしていれば、と思う。
セ、パ両リーグの事情は異なるが、どちらも投票記者が悩んだことは察する。けれども、結果には「うん?」と思わざるをえない。大物選手の不在を象徴した結果となった。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)