優勝チームから「MVP」選ばれない不思議 記者を悩ませた「チーム貢献か、個人成績か」

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ライバルが見当たらなかった

   菅野は防御率1位のタイトルを取ったものの、12勝(5敗)はセ・リーグの歴代MVPの先発投手受賞者では最も少ない勝利数だ。パ・リーグでは99年の工藤の11勝がある。試合数23も少ない。しかもシーズン中に1か月以上も戦列を外れた。

   現実は、ライバルが見当たらなかった。他チームでは阪神勢のメッセンジャー(1位投票3位)、ゴメスらが目立った。セ・リーグは、シーズン60本塁打の新記録をつくった昨年のバレンティン(ヤクルト)の例があるから、山田も含め他チーム選手は無理だったといえるだろう。

   巨人の中にはもっとライバルがいなかった。投手陣は菅野以外で2ケタ勝利を挙げたのは杉内(10勝)のみ。打者も打率3割をマークした選手はいなかった。

   候補といえたのは抑え投手で30セーブのマシソン。打者では全144試合に出場し、2割7分9厘、61打点、23盗塁の坂本。この両選手ぐらいだった。坂本が3割を打っていればいい勝負になったと思う。

   パ・リーグ優勝のソフトバンクの柳田が選ばれなかったのは気の毒としかいいようがない。フル出場し、3割1分7厘、91得点、15本塁打、70打点、33盗塁。文句なしの成績である。毎試合出てこれだけの活躍。思い切りのいいスイングと飛距離は、久しぶりに出現した「入場料を払って見たい選手」だ。

   金子は最多勝、防御率1位のタイトルを獲得。立派な成績だが、奪三振も取って投手三冠王を手中にしていれば、と思う。

   セ、パ両リーグの事情は異なるが、どちらも投票記者が悩んだことは察する。けれども、結果には「うん?」と思わざるをえない。大物選手の不在を象徴した結果となった。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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