中国の漁船によるアカサンゴの密漁で、小笠原諸島(東京都)の漁師らがその深刻な被害を訴えている。あまりにも無残な姿を晒していたというのだ。
「海底の映像を見ると、まるで砂漠のようで涙が出た」
報道によると、密漁の現状を訴える緊急集会が東京都内で2014年11月26日にあり、地元漁師の男性(40)がこう怒りをぶつけた。
NHKの撮影で、砂漠のような惨状が判明
集会には、超党派の国会議員や地元の議員、漁師ら約300人が参加した。漁師らからは、「生態系が壊されている」などと抗議の声が上がり、政府には、海上警備を強化することなどを訴えた。
「中国密漁船団から小笠原諸島・日本の海を守れ」とうたったこの集会は、小笠原村議会の有志を中心に立ち上げた実行委員会が主催した。実行委員長の高橋研史村議は、J-CASTニュースの取材に応じ、漁師の男性が見たという海底の映像は、NHKの取材班が撮影したものだと明かした。
この映像は、NHKで19日朝に放送された「おはよう日本」の中で流された。
NHKでは、最新鋭の水中ロボットカメラを使って、中国の漁船が夜間操業していた場所で延べ15時間にわたって水深約200メートルの周辺海底を撮っていた。番組の映像を見ると、白く砂のようになっている海底の様子が映され、漁船が使ったとみられる青い網が何かに引っかかっていた。海底では、20か所近くこのような網が見つかったという。
さらに、折れたアカサンゴも見つかった。専門家によると、断面が新しいため、最近折られたものだという。海底では、ほかにアカサンゴの姿が見つからず、根こそぎ獲られていたことが分かった。この惨状ぶりに、出演した漁師は「酷いですね、これ」と嘆いていた。
地元の小笠原島漁協では、J-CASTニュースの取材に対し、密漁の酷さを次のように話す。
魚がいなくなって、深刻な漁業被害の予想
「中国の漁船は、多いときでは、最高200隻以上も押し寄せて来たと聞いています。昼は領海外に出ていますが、夜になると、領海内に入ってきます。夜は無灯火で操業していますので、レーダーで見なくてはならず、とても怖いんですよ。向こうは、50~100トンの鋼鉄製の大きな船で、こちらは10トン未満のFRP(繊維強化プラスチック)製の小さな船です。もしも、ぶつかったら、ひとたまりもありません」
わざと追いかけてくるそぶりも見せるため、地元の漁師らは、怖くて操業ができなかったという。
「1週間前に海保が取り締まりに本腰を入れてから、中国の漁船は減ってきています。ここ2、3日は見ないほどです。今後については、何とも分からず、もう来なければいいのですが...」
サンゴが荒らされれば、魚の棲息場所がなくなり、深刻な漁業被害が出ることが予想される。現在はエビ漁が中心だが、騒ぎが落ち着いて通常の漁を再開したときに、その程度が分かってくるのではないかという。
前出の高橋研史村議は、次のように懸念を明かす。
「30年ほど前に、台湾の漁船が何百隻も押し寄せて来たときも、サンゴが大量に密漁されて、魚が急に釣れなくなりました。今になってやっと魚が獲れるようになったというのに、残ったサンゴもやられて、魚がいなくなるのを危惧しています。中国の漁船が最初20~30隻ほどだったときに政府が動いてくれれば、こんなことにはならなかったと、みんな怒っていますよ」