福島県のほぼ中央に位置する郡山市やその周辺は農業も盛んだ。実は、グルメも涎を垂らす、うまいものの宝庫なのをご存じだろうか。自慢の特産物を「郡山ブランド」に認証して、広めていこうという事業も始まっている。そこで、第1回農林水産物の部で選出されたイチオシ二商品を取り寄せて食べてみた。
「うねめ牛」は口当たりがやわらかく、繊細な味わい
その一つがうねめ牛。「采女牛を育てる会」の会員が出荷する黒毛和種雌牛の中で、肉質等級が4級以上のブランド牛肉だ。
郡山は古来、安積(あさか)の里と呼ばれ、朝廷との関わりが深かった。当時をしのんで語り継がれてきた「采女伝説」にちなみ、「うねめ牛」と名づけたのだそうだ。
今回は、「うねめ牛肩ロースすきやき」と「うねめ牛モモすきやき」のうち、肩ロースをネットで注文した。開いてみると、高級牛肉のトレードマークである霜降りがきれいに入り、その味わいに期待がふくらむ。
わくわくしながら、すき焼き鍋に具材を入れ、最後にうねめ牛を投入。上質な脂は溶け出す温度が低いというが、見る間に霜降りが消えていく。ぐつぐつと煮える鍋の中で色が変わったところを素早くすくいあげ、溶きたまごに絡めて一気に口の中に放り込む。噛む前からとろけるような、ふんわりとしたやわらかな食感。瞬間、脂から染み出したほのかな甘みに加えて、コクのある旨みがふわっと広がった。
霜降りがしっかり入っていながら、脂身のくどさとは無縁だ。軽やかな口当たりとまろやかな味わい。「うねめが羽衣を羽織るようなイメージの、繊細で優雅な肉質と食感」という説明にうなずくほかなかった。
采女牛を育てる会の景山勇喜さんによると、性格の穏やかな仔牛を買い付け、餌の与え方や牛舎の温度など、できる限り牛にストレスを与えないよう環境を整え、健康で良質な肉質に仕上げる努力をしている。他のブランド牛と比較した勉強会なども開いているそうだ。
福島県による放射性物質検査で全頭検査しており、安全性は保証されている。ただ、いまもなお、風評被害を受けている。それでも、急速に増えている消費者からの「おいしかった」の声を励みに、おいしい肉作りへの情熱を失わず頑張っている。