牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスの2015年3月期の営業損益が17億円の赤字(前期は81億円の黒字)に転落する見通しになった。2014年11月10日発表した。
純損益も75億円の赤字(同11億円の黒字)になるとしている。営業赤字も純損失も1982年の創業以来、初めて。深夜営業休止に加え、主原材料である牛肉価格が高騰する中、値上げなどの対応も遅れた。
かつては「デフレ経済の寵児」
ゼンショーが今期、通期業績を下方修正するのは、これで2度目だ。5月の段階では、営業利益は前期比95.6%増の159億円、純利益は3.8倍の41億円とし、年間配当も前期と同じ16円と予想していた。
ところが8月6日、営業利益は80億円、純損益は13億円の赤字になると下方修正。年間配当予想も、8円に半減させていた。深夜時間帯に、一人で接客から調理まで行う「ワンオペ」を解消するための費用や、食材価格、採用コストの増加が主因だった。
これが、さらに悪化。グループ全体の既存店売上高想定を引き下げたほか、無配転落も発表した。小川賢太郎会長兼社長は月額報酬の30%▽ほかの取締役は10%▽執行役員は7%――12月から半年間減額する。
かつて「デフレ経済の寵児」とも言われた牛丼業界。大手各社は200円台で価格競争を続けた。風向きが変わったのは、今年4月の消費増税だった。牛丼大手3社は増税前、税込み280円(並盛り)で横一線だったが、吉野家は300円、松屋は290円に値上げする一方、すき家は270円に値下げした。割安感を出して集客しようという狙いだった。
「最安水準」が収益を圧迫
最初に動いたのは、松屋だ。7月下旬から、関東圏の店舗で、冷凍からチルドへ牛肉を切り替えた「プレミアム牛めし」を380円で売り出した。それまでより90円高い。すき家は8月下旬から、それまでより21円高い291円へと価格を引き上げたが「最安水準」であることには変わらず、結果としてこれが収益を圧迫した。
吉野家は牛丼の価格は変更していないが、他社に先駆けて10月下旬に投入した鍋メニュー「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」(並盛り)は、5月の販売終了時点より40円高い630円に設定した。火の付いたコンロで提供するため、最後まで「アツアツ」を楽しめるのが人気で、昨シーズンは1400万食販売した大ヒットメニューだけに、値上げが受け入れられれば、収益に貢献するのは間違いない。
「すき家」も「牛すき鍋定食」を11月下旬に復活。具材を3割増量し、並盛りは734円と今年2~3月の発売時より154円高く設定した。2月に発売した際には店舗での作業に手間がかかり、アルバイト店員が大量に退職する要因となったが、今回は店内作業を大幅に減らすよう工夫したという。
各社が「デフレ路線」からの転換を図る背景には、牛肉価格の高騰がある。「米国産牛肉の価格は昨年比2倍に上昇している」(ゼンショー)という。今後も急激な円安によって、さらにコストは膨らむ可能性がある。原材料高をいかに販売価格に転嫁できるかが収益改善のカギを握りそうだ。