ミシンのブラザー工業、最高益へ いまやスマホの工作機メーカーに大変身

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「財テク」には走らず製品開発

   こうした多角化のうち、後の成長の柱となるプリンターを中心とする情報通信機器事業の萌芽となったのが、1960年代に開発したタイプライターだ。1984年のロサンゼルス五輪では、公式サプライヤーとしてタイプライターを提供するにいたる。

   一方で、次世代を見据えた開発も進め、1971年には高速ドットプリンターを発売。1985年には電子タイプライターの生産を始めた。さらに、1980年代後半にはファクスやレーザープリンターも手がけ、今にいたる情報通信機器事業の土台を築いた。

   多角化といっても失敗し撤退した事業もあるが、バブル期の他の日本企業との大きな違いは、不動産や株に投資する「財テク」にあまり興味を持たず、堅実に一歩先をゆく製品開発を進めたことにあった。そのため、日本経済がバブル崩壊に見舞われた後の1990年代も、パソコン活用が進む米国のスモールオフィス向けにファクスやプリンターを兼ねた「複合機」を大量に販売できたのだ。同じ1990年代に日本で初めて通信カラオケ事業も展開、カラオケ事業は現在も着実な利益を生んでいる。

   もう一つ、ブラザー工業の「今」をけん引するのは情報通信機器に加えて、工作機械(産業機器)だ。スマートフォンの金属ボディーを削る「タッピングセンター」と呼ばれる機械など、地味だが旺盛な需要のある分野。スマホ部品を米アップルなどに納品する新興国企業の引き合いが強く、2014年9月中間連結決算で産業機器部門の売上高は前年同期比93%増とほぼ倍増し、過去最高益の業績予想を生む原動力になった。失敗を恐れずに新事業を展開するブラザー工業に学ぶ点は多い。

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