円安による輸送コストの上昇や世界的な原材料の高騰を受けて、さまざまな食品の値上げが止まらない。
原材料の高騰分をそのまま価格に転嫁する商品もあるが、なかには内容量を減らした、実質値上げの「ハリボテ」食品も少なくない。食品メーカーなどは「苦肉の策」と言いたいのだろうが、消費者としては「見た目」が変わらないだけに、どこかすっきりしない。
牛乳のパッケージ、開けてみたら「空洞」が...
いま、インターネットではセブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド「セブンプレミアム 北海道十勝おいしい牛乳」が話題だ。その容器は、パッケージの上部が斜めに切り取られたような形で、「高さ」は従来の1リットルとほぼ同じ。「使いやすさを追求」して日本製紙と日本大芸術学部が共同開発した、国内初のデザインという。
ところが、これが「ネット市民」の批判を買った。1リットル入りと誤解されないように「新容量900ml」(ミリリットル)と大きく書かれているはいるものの、パッケージを開けると上部に「空洞」があり、「ハリボテではないか」というのだ。
パッケージの「高さ」が1リットルの牛乳と変わらないことで、誤解して買ってしまう人がいるようで、ネットには、
「明らかに意図的。年寄りとか子どもは気付かないだろ」
「姑息としか言いようがない。他の牛乳と同じように並んでたら、わからないでしょ」
といった厳しい声が寄せられている。
その半面、
「ひとつだけ商品の背が違ったりすると、検品や陳列や陳列時の見栄えなんかに影響するんだよ。いいたいことはわかるが」
「ちゃんと(内容量は)書いてあるでしょ。これで誤解するか?」
などと、擁護する声もある。
消費税率8%への引き上げから8か月。相次ぐ値上げラッシュで、「これ以上の値上げは、生活に支障を来す」という消費者の憤りが、メーカーや小売業者に向いてきたのかもしれない。
ある経営コンサルタントは、「メーカーとしては、お客が離れることが一番怖い。なので、これまでと同じように買ってもらうために『価格はさわりたくない』と、まず考えます。小手先かもしれませんが、減量やパッケージの変更はそういうことです」と説明する。
チョコレート、ドレッシング、食用油... 枚挙にいとまがない!
「お値段すえ置き」で内容量を減らす、実質値上げは枚挙にいとまがない。しかも最近は核家族化による「個食」の定着や高齢化で1人あたり消費量が減っていることで、鮮度が落ちないうちに使い切る「少量タイプ」の商品が売れていることもある。
だからといって、内容量が減った分がそのまま価格に反映されているわけではないし、かえって従来品よりも割高というケースもある。たとえば、キユーピーの「ノンオイルドレッシング」は容量を170ミリリットルから150ミリリットルに減量。実勢価格も186円から180円にしたものの、1ミリリットルあたりの単価は0.1円高くなったとされる。
なかには「お値段すえ置き」と言いながら、ちゃっかり内税表示だったものを外税表示にして、便乗値上げした商品やサービスもないわけではない。
インターネットでは「お値段すえ置き、実質値上げ?」と題して、「減量」以後とそれ以前の商品を比較する、まとめサイトがあって比較できる。
チョコレートは、原料のカカオ豆の価格上昇を背景に実質値上げ。パッと見たところ気がつかないが、明治の「ミルクチョコレート」は55グラムから50グラムに小さくなった。森永製菓も4~8%減らし、ロッテも10~26%「減量」した。また、ネスレ日本のチョコレート菓子「KitKat」は15枚入りが、1枚減って14枚入りとなっている。
乳製品は牛の飼料代や、円安で輸入原料チーズが高騰。雪印メグミルクの「家庭用スライスチーズ」は8枚入スライス(144g)が7枚入(126g)に減った。
調理用の食用油も、トウモロコシや菜種など原料の輸入価格の上昇で、1500ミリリットルで販売していた大ボトルを、価格すえ置きで1350ミリリットルに10%減量した。
マルハニチロは、冷凍食品「プリッと大きなえびチリ」のエビの数を5尾から4尾に減らした。カゴメの野菜ジュース「野菜生活100」は容量を900ミリリットルから720ミリリットルに変えている。
メーカーは「割高感」を抑えるのに、懸命なのだ。