2014年11月18日、安倍晋三首相は10%への消費増税延期を決断した経済政策への信を問うべく、「代表なくして課税なし」というスローガンを採用し、ついに衆議院解散の「伝家の宝刀」を抜いた。
アメリカ独立戦争時に唱えられたスローガンを持ち出し、解散の歴史的な意義を強調しようとしたが、今回の解散が当時の状況にすんなり当てはまるとは思われず、ネットでは「意味がよくわからない」「この場で使った意味がわからん」という評判がもっぱら。専門家からも「何の関係もない」と厳しい評価がされている。
本家・米国の独立戦争と状況が違う?
今回の解散で注目が集まっていたのは、その「大義名分」だ。安倍首相は消費増税の延期の是非を大義名分として位置づけ、「代表なくして課税なし」というスローガンを採用した。
もともと「代表なくして課税なし」はアメリカ独立戦争時のスローガンの1つ。イギリス領だった18世紀当時、移民たちは税を課せられる一方で、自らの代表をイギリス議会に選出することができなかった。これに反発し、イギリスから独立しようとする運動の中で盛んに唱えられたのが「代表なくして課税なし」というスローガンだ。移民からすれば、「議会の代表を認めないのに課税だけするな」ということだ。
では、今回の衆議院解散に置き換えるとどうなるだろうか。安倍首相自身が特に深く説明しなかったこともあり、真意は分かりにくいが、「課税」は「消費増税」ということになるだろう。続いて「代表」は、国民を代表する「安倍内閣」または「衆議院」といったところか。
しかし、安倍首相が決断したのは増税の先送り。米国独立戦争の時と違って、すでに日本には議会があり、与党だけでなく、野党各党もほぼ先送りを容認している。移民たちが、議会で代表を選ぶ権利がないまま課税されることに納得せず、独立しようとした本家「代表なくして課税なし」に、増税を見送って解散に打って出る安倍首相流の「代表なくして課税なし」を当てはめようとすると、どうもつじつまが合わない。
会見を見ていた有権者の頭にも安倍首相が唱える大義名分がすっと入ってこなかったようだ。
「この場で使った意味がわからんw」「見当はずれな引用をしているみたいだ」「ぜんぜん意味も場面も違うだろうになあ」「代表なくして課税なしって安倍総理、貴方が日本の代表ですよ。何を寝ぼけた事を言うのか分かりません」
といった声がツイッターなどネットにあふれかえった。
独立戦争時のボストン茶会事件にからめて、「『代表なくして課税なし』を言われた以上は、静岡県民として茶葉を駿河湾に投げ捨てればいいのだろうか」という声も。「今回の選挙は、日本が、アメリカ植民地からの独立戦争を始めるかどうかの信を問う選挙って理解していいのかな?」「『アメリカの属国をやめる』ということ?」という皮肉まじりの指摘もあった。