「新巻鮭発祥の地」とされる大槌町で、秋サケ定置網漁のシーズンを迎えて水産業再生に向けた取り組みが活発になっています。
一つは壊滅した水産加工業再建への動きです。震災後、積極的に企業誘致を進めた結果、これまで6社の進出が決まりました。水産加工業の平庄株式会社(岩手県釜石市)、カキレストランの株式会社ヒューマンウェブ(東京都中央区)、冷凍食品製造と外食事業のプロトンダイニング株式会社(奈良市)、水産加工業の石山水産株式会社(岩手県山田町)、水産加工業の小野食品株式会社(釜石市)、全国のコンビニやスーパーに海産物を材料にした菓子やおつまみを製造、出荷している株式会社壮関(栃木県矢板市)です。
6社目の壮関と町との立地協定調印式が2014年9月24日にあり、壮関の関雅樹社長は「三陸とは深いつながりがある。復興の一翼を担って恩返ししたい」と述べ、碇川豊町長は「生業(なりわい)の再生に向けて雇用拡大が期待でき心強い」と期待を込めました。
もう一つは三陸漁場で操業する漁船を大槌港に呼び込もうという大槌町廻来船(かいらいせん)誘致協議会の設立です。漁船が入港すると、魚の水揚げによる手数料のほか、燃料代、氷購入代などが地元の収入になります。設立総会が開かれた10月14日は、来年4月稼働をめざす町の製氷貯氷施設工事の安全祈願祭も開かれました。新しい施設はこれまでの施設と比べて能力が格段に高く、2日間で20トン製氷、最大500トン貯氷できます。完成すると、廻来船など大型漁船の水揚げに対応できる規模になります。
魚市場では11月12日朝、震災後初のサンマの水揚げがありました。入港したのは船籍港・根室の第六十三若竹丸(19トン)。午前7時に船倉に収められたサンマの水揚げが開始されました。2時間ほどで約25トンの水揚げが終わり、生食用、加工用として水産加工会社に引き取られて行きました。この水揚げが廻来船誘致の呼び水になってほしいと、関係者は願いました。
秋サケ定置網漁を支える「さけますふ化場」も11月11日、第1ふ化場に続いて第2ふ化場が復旧し、目標の2千万尾の稚魚を大槌川に放流する体制が整いました。竣工した第2ふ化場は、自動掃除機や防鳥獣ネットを備えた最新鋭の飼育水槽が38基あり、1千万尾を生産できます。平成24年に復旧した第1ふ化場の1千万尾と合わせて2千万尾生産できる規模のふ化場が完成したことになります。この施設で育った稚魚は来春、放流され、3年~5年かけて母なる大槌川に戻ってきます。
この日の竣工式では、ふ化場の指定管理者、新おおつち漁業協同組合の阿部力組合長が「大槌川、小鎚川に震災前のようにサケが戻り、水産業の町・大槌復興の原動力になるよう努力したい」と決意を述べました。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
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