米サプライヤーが嘆いた「厄介すぎるディール」
実はアップルは、別のサプライヤーとも摩擦を起こしていた。
2014年10月6日、iPhoneに使われる「サファイアガラス」を供給していた米企業、GTアドバンストが経営破たんした。「iPhone6」「iPhone6 Plus」にサファイアガラスが採用されず、最終的に破産を申請する道を選んだという。
これにより、両社が交わしていた守秘義務が解除された。また米破産裁判所の判断によりGT経営陣の宣誓供述書が公開された。オンラインITメディア「ギズモード」が11月13日付で中身を紹介しているが、これを読むと両社の契約内容とGTが破たんに至るまでの背景が見えてくる。
GT幹部の証言によると、同社はもともと製造機器メーカーで、当初アップルからはサファイア結晶炉を2600台買いたいとの申し出があったという。だが交渉を重ねるうちに、相手が欲していたのは装置である炉ではなく、サファイアの結晶そのものだと判明。そこでGTは、アップルからの借り入れで巨額の設備投資を断行し、サファイア製造工場を立てて生産を開始した。だが、アップルが選定した製造機器の性能が芳しくなかったうえ口出しや要求内容の変更が相次いだ。しかもアップルの買い取り価格は市場価格を割り込み、独占供給契約だったため他社に転売もできない。結局、納期に間に合わず新型iPhoneへの採用は見送られ、大量の在庫だけが残ったという。
契約は、どうもGT側に相当不利だったとみられても仕方がなさそうだ。GT幹部は、製造したサファイアの結晶をアップルが買わねばならない義理はひとつもなかったと証言しているから驚く。アップルとの間で「厄介すぎるディール(契約)をつかまされてしまった」と嘆いた様子も書かれている。
アップルのサプライヤーは北米や欧州、アジアに広がる。そのうち日本からは139社が名を連ねており、中国に次いで2番目に多い。GTのように泣きをみた会社もあるが、島野製作所は黙っているわけにはいかなかったのだろう。