大相撲の世界に入ってまだ2年
翌日の横綱白鵬との一番では、組んだとたん投げ飛ばされた。
「(オレと)長い相撲を取るのは、まだ早いな」
白鵬は軽く言い放った。先場所優勝した後、白鵬は逸ノ城の健闘をたたえ、大相撲人気の復活のヒーローとまで言った。それがこうまで言わせることになったのは失望したからだろう。モンゴルの後輩として期待しただろうから、なおさらきつい言葉になったのだと思う。
「変化して勝っても次につながらない」
「汗もかかずに楽をして勝ったら出世などできない」
こんな指摘もある。確かに大関、横綱になった力士は正攻法の相撲を取ってきた。そうしないと上位力士の強さが分からないし、稽古の仕方も違ってくる。
ただ逸ノ城が大相撲の世界に入って2年ほどしか経っていないことも周囲は考慮する必要がある。まだ右も左も分からない状態だし、相撲の取り方も未熟だ。今は大きな体とパワーを生かした力ずくの相撲でしかない。
おそらく逸ノ城は、とにかく勝つ、ということしか頭にないのだろう。プロだから当たり前のことなのだが、大器ゆえに周りの声はかまびすしい。直属の親方の指導は、本人、大相撲のために重大である。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)