全国の農協組織を束ねる全国農協中央会(JA全中)の改革問題で、政府とJA全中の対立が注目されている。
政府は来年の通常国会に農協法の改正案を提出する計画で準備を進めてきたが、解散・総選挙となれば、選挙支援をからめてJA全中が与党議員に圧力をかけるのは必至だ。議論がどう収れんするか、予断を許さない状況になっている。
地域農協の創意工夫を引き出す狙い
政府の規制改革会議は2014年5月にまとめた農業分野の改革案の中で、JAグループについて、(1)地域農協に対するJA全中の指導権を廃止、(2)JA全中の農協法の根拠規定をなくし、必要なら任意の団体として活動、(3)全国農業協同組合連合会(JA全農)は株式会社化を可能にする――などの方向を打ち出した。一律的な経営指導に批判の多いJA全中の影響力を弱め、全国の地域農協の創意工夫を引き出す狙いだ。
農協改革は安倍晋三首相の肝いりのテーマで、首相自身、衆院予算委で「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになる」(10月3日)と明言するなど、並々ならぬ意欲を見せる。
これに対しJA全中は11月6日に自己改革案を発表。農協法に基づく地域農協への一律的な経営指導の権限を廃止し、農協のニーズに応える「経営相談」に改めることを明記し、一部の権限を手放す姿勢を示した。しかし、監査権については現状維持とし、地域農協が外部の監査を自由に選ぶことは認めない考えを鮮明にし、中央会の位置づけについても、着実な監査を実施するためにも引き続き農協法で規定する必要があるとした。
政府側は早速反応。西川公也農林水産相は11月7日に万歳章・JA全中会長から全中案の説明を受けた後、記者団に「政府の考えとはずれがある」と明言。菅義偉官房長官も同日午後の会見で、監査権を持ち続けることに、「政府・与党(の検討)と方向性が合っているかどうかは疑問だ」と指摘した。翌週の12日、規制改革会議の農業ワーキング・グループ(WG)がJA全中案を批判する提言を出し、地域農協への監査は「廃止が必要」と改めて強調し、JA全中の一般社団法人化を求めた。