男性であることを理由に入学を認めないのは違憲だとして、福岡県内に住む20代の男性が公立大学法人福岡女子大学に入学願書の受理などを求める訴訟を近く起こす。
国公立女子大の違憲性を問う国内初の訴訟になるとして注目を集めている。同時に、全国的に共学化が進んでいることもあり、女子大の存在意義を改めて考え直すきっかけにもなりそうだ。
ネット上には「奈良女子大学」入学希望の相談も
報道などによると、この男性は管理栄養士の資格を取るため、2014年11月に福岡女子大の「食・健康学科」の社会人特別入試に出願した。しかし大学側は男性であることを理由に受理しなかった。福岡県内で栄養士の資格取得に向けたカリキュラムのある国公立大は同大学のみ。県内の私大という選択肢もあるが、男性は経済的事情から公立に進めなければ資格取得は断念せざるを得ないとしている。
男性側は女子大への入学を認めないのは性差別で、「法の下の平等」を規定する憲法14条に反するなどと主張。不受理処分の取り消しや慰謝料を求め、12月にも福岡地裁に提訴する見込みだ。米国では同様の訴訟で違憲となった判例があるそうだが、男性の代理人弁護士は同種の提訴は初めてだと指摘している。
訴訟こそなかったものの、国公立女子大を巡る議論はこれまでにもあった。インターネット上にも「税金をたくさん投入している公の機関である国立の女子大が男性を一切受け入れないって男性差別で違憲にならないんでしょうか?」といった意見はいくつも出ている。
受験したいという男性が相談していたケースもあり、2013年には国公立大の理学部を受験したいという大阪在住の男性がYahoo!知恵袋上で相談を持ちかけていた。
男性は一人暮らしする余裕がないため、受験できるのは京都、奈良、大阪、和歌山の4府県にある国公立大のみだという。とはいっても学力的に難しい京都大や大阪大、二次試験科目の負担が大きい大阪府立大、大阪市立大は合格に不安があり、京都工芸繊維大は家からも距離がある。残った大学の中で理学部があるところを探したところ、奈良女子大という結論に至ったそうだ。その上で男性は「奈良女子大学は、私にとってこれ以上ない最高の大学であり、ただ私が男であるからという不当な理由で、入学できないのなら違憲であるとし、裁判を起こすつもりです」と書いていた。
「内閣も『男女共同参画』」「良妻賢母育てる時代は終わった」
もともと女子大には、教育を受ける機会が少なかった女性を保護、優遇するという側面があった。しかし男女共学の大学が一般化したいま、その存在意義が疑問視されつつある。実際、男女平等の流れに加え、大学の生き残り競争も激化する中、より多くの受験生獲得を狙って女子大は続々と共学に改組している。
たとえば武蔵野女子大学(江東区)は03年に「武蔵野大学」と名前を変え、翌年共学に。女子大で初めて経営学部を設置した文京女子大学(文京区)は02年に文京学院大学となり、05年に男女共学化を果たした。公立では05年に大阪女子大学や広島女子大学が統合によって共学化し、熊本女子大学、山口女子大学、高知女子大学なども相次ぎ共学の県立大となった。
98年のピーク時には98校あった女子大は、13年には77校となった。現在、国立の女子大はお茶の水大学と奈良女子大学、公立は群馬県立女子大学と福岡女子大学を残すのみとなり、私立も減少の一途をたどっている。
女子大という形は守りつつも大学院を男女共学にしているケースや、一部コースや大学院研究科を共学にしているケースもある。138年の歴史を誇るお茶の水女子大学も、同大学院での研究指導を希望する男子学生を特別研究生として受け入れている。また、附属の幼稚園~中学までは男女共学だ。
こうした流れもあり、女子大を「時代遅れ」「時代錯誤」とする意見は多い。今回の訴訟を通じ、インターネット上でも
「そもそも今は安倍内閣も『男女共同参画』を推し進めてる時代なのに、今どき『女子校』がある事自体が『時代遅れ』」
「良妻賢母を育てる時代は終わったんだから、男女共に良人賢親であればいいんじゃないの?ほかにも女子大はいっぱいあるけど時代錯誤だと思うよ」
といった意見があがっている。