大手メディアが静かすぎる... サンゴ密漁船逮捕劇に海保「SST投入」は本当なのか

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   小笠原諸島沖で逮捕された中国のサンゴ密漁船の船長は2014年10月以降、これまで6人を数える。

   そんな中、海上保安庁の取り締まりで「特殊警備隊(SST)」が投入されていたと「週刊文春」(11月20日号、同13日発売)が報じた。SSTが投入されたとなると異例の事態だ。しかし海保からの正式発表はなく、全国紙など大手メディアによる確認記事もない。

海保「具体的な事案については回答を差し控える」

SSTは投入されたのか(画像は04年9月公開資料から)
SSTは投入されたのか(画像は04年9月公開資料から)

   「戦慄スクープ」と週刊文春が見出しをつけている通り、記事は海保の緊迫した取り締まりの様子を伝えるものだ。10月5日、日本の領海内で赤サンゴを密漁する中国船に海保ヘリが急行。SSTはロープを伝って密漁船の甲板に降りて、船員を確保したという。

   また、SSTは密漁船の船員たちと交戦したと、付近にいた日本船船長の証言が伝えられている。それによると、刃物を振りかざす船員が乗る密漁船に、軽機関銃を構えて突入したというのだ。

   SSTは海上テロなどに対処する部隊で、特殊警備隊という名前から想像できるように、出動自体ほとんど公表されることがない。そのSSTが出動、中国密漁船の船長を緊急逮捕したとあっては全国紙で大きく取り上げられそうだが、実際にはそうなっていない。10月6日以降、各紙で領海内での違法操業で逮捕者が出ていることは報じられているが、SSTに関する記述はない。

   中国側から大きな反応があってもよさそうだが、こちらも見当たらない。10月24日の駐日大使館の定例会見で楊宇報道官は「日本の関係機関が中国の船員の合法的権益を確実に保証し、関係の事案を適切に処理することを要求する」と語るにとどめ、SSTについて言及しなかった。

   実際にSSTは出動したのだろうか。J-CASTニュースの取材に対し、海上保安庁からは「具体的な事案については回答を差し控える」という答えで、出動については否定も肯定もしなかった。

逮捕船長6人中5人が釈放済み

   海保によると、これまで逮捕された中国船船長は6人。そのうち、実は5人がすでに釈放されている。沿岸から約370キロの排他的経済水域(EEZ)内で違法操業した場合、担保金と呼ばれる実質的な罰金を関係者が支払うと保証する書面を提出すれば、早期に釈放される仕組みがあるためだ。

   では残りの1人はどうなったのか。横浜海上保安部によると、10月5日に外国人漁業規制法を違反した容疑で密漁船の船長、許益忠容疑者が逮捕されている。容疑者は沿岸から約22キロ以内の領海で違法に操業していた。領海内での逮捕の場合は担保金による早期釈放制度は適用されないため、すでに横浜地裁に起訴されている。許容疑者の逮捕日と、週刊文春によるSST投入日、ならびに「領海内」の事件ということも一致するが、具体的な逮捕手段について、横浜海上保安部は明らかにしなかった。

   なお、週刊文春はSST投入が極秘に行われた背景を、日中首脳会談開催への影響を危惧したためとしている。そうした甲斐もあってか、中国側も対応に乗り出し、APEC開催中は小笠原諸島沖での密漁船の数は激減。しかし、首脳会談後は再び増加に転じ、6人目の逮捕者を出している。

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