ソニーが事業の柱と位置付けたスマートフォン(スマホ)は、価格面で優位に立つ新興の中国勢に押されて戦略の見直しを迫られた。
平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は、スマホ再生のキーワードに「商品力の向上」を掲げ、高級モデルに特化する方針だ。米アップルのようなグローバルブランドと、攻勢を強める「中華スマホ」に挟まれて存在感を示せるか。
中国メーカーひしめく「格安スマホ」には参戦せず
ソニーは2014年9月17日、スマホ事業の中期計画の見直しを発表。約1800億円の減損を計上し、中期計画では「高付加価値ラインアップへの集中、普及価格帯モデルの削減」といった施策を明らかにした。海外市場についても、一部地域での戦略を練り直すという。
「中華スマホ」の台頭による影響を受けたのは明らかだ。中国メーカーの華為技術(ファーウェイ)や小米(シャオミ)、レノボは今や世界シェアで韓国サムスン電子、アップルに次ぐ3位の椅子を争う。低価格という武器だけでなく、品質面でも消費者に受け入れられてきた。
国内を見れば、月額通信料金を低く抑えた「格安スマホ」が人気だ。小売り大手のイオンや家電量販店のビックカメラ、オンライン通販大手のアマゾン・ジャパン、さらに楽天といった異業種のプレーヤーが続々と参入している。採用された端末のメーカーを見ると、華為をはじめとする中国勢や台湾エイスース、韓国LGといった海外の製品がほとんどだ。今後利用者の伸びが予想される格安スマホだが、ソニーは一線を引いている。勢いのある中華スマホと正面から競合する市場は主戦場としない思惑がにじむ。
平井社長は11月11日付の読売新聞朝刊のインタビューで、「ソニーには独自の戦い方がある」と述べ、技術やコンテンツ、ネットワークなどを組み合わせて他社と差別化するかが重要だと強調。スマホ「エクスペリア」に搭載したソニーが持つ高性能カメラや4K動画、高音質技術は高い評価を得たと続けた。
確かに今のままでは「ジリ貧」の恐れがある。各種調査では世界シェアのトップ5から脱落。米経済専門放送CNBC電子版は8月1日、シェアが2~5%のメーカーがソニーを含め7、8社あり、全社が黒字化に苦労しているとの専門家の見方を紹介した。ソニーの独自性が示せないと、現状からは抜け出せなさそうだ。