0歳から19歳の未成年を対象とした「ジュニアNISA(小額投資非課税制度)」が早ければ2015年度にも誕生しそうだ。高所得の祖父母や両親らが孫や子名義の口座を開いて株式などを取引し、将来の進学や結婚などの資金に役立てようというものだ。
現行のNISAは2014年1月に始まったばかりだが、「中高年の投資経験者の利用が大半を占め、20代、30代の利用は約1割に留まっている」(金融庁)のが現実。ならばジュニアNISAを設け、さらなる投資資金を呼び込もうという戦略だが、恩恵を受けるのは富裕層だけだ。
期待したほどNISAの利用は進んでいない
金融庁によると、ジュニアNISAは「高齢者から若年層へ、預貯金から株式等へ資金シフトを後押しする」のが目的だ。「若者は大学進学などまとまった資金が必要。祖父母など高齢者は資金援助する意欲が高い。両者のニーズを合致させたい」との狙いがある。
日本の家計の金融資産は約1600兆円あるが、その7割近くは60歳以上の世帯に偏在し、その半分以上が預貯金で保有されている。アベノミクスの第3の矢である成長戦略を進めるためにも、政府として「貯蓄から投資へ」の動きを加速させる必要があるというわけだ。
現行のNISAは株式や投資信託などの配当や譲渡益が最長5年間、非課税となるが、年間投資上限額は100万円となっている。ところがNISAの口座開設は中高年の投資経験者が大半を占め、日証協によると、投資未経験者の口座開設は11%にとどまる。年間の投資上限額が100万円では富裕層にとって魅力が薄いこともあり、政府や証券業界が期待したほどNISAの利用は進んでいないのが現実だ。
「貧富の差」の拡大につながる懸念
そこで金融庁が考案したのが「ジュニアNISA」。祖父母や両親らが孫や子の名義で口座を開設して資金拠出と運用管理を行い、長期投資をしてもらおうというわけだ。年間の投資上限額は80万円、非課税期間は最長5年間で、18歳までは払い出しを制限し、18歳以降は自由に使えるというものだ。
安倍政権が2014年6月に閣議決定した日本再興戦略は「NISAの普及促進に向け、利用者のニーズを踏まえた施策の推進で投資家の裾野拡大を図る」とうたっており、金融庁は年末の税制改正でジュニアNISA創設を求める方針だ。英国では2011年11月、英国在住の18歳未満を対象とした英国版ジュニアNISAがスタートしており、金融庁は英国をモデルに制度創設を目指している。
証券業界はもちろんのこと、株価上昇を狙う安倍政権としてもジュニアNISA創設や年間投資上限額の拡大はウェルカムで、これまで麻生太郎財務相・金融担当相、甘利明経済財政担当相、菅義偉官房長官ら関係閣僚が前向きな発言を繰り返している。年末の自民党税制調査会の税制改正論議は消費増税が最大の争点だが、ジュニアNISA創設も隠れた焦点のひとつとなる。
ただ、ジュニアNISAで恩恵を受けるのは、高所得の祖父母とその孫ら限られた富裕層中心。消費税率引き上げの一方で行われる金持ち優遇策とも言え、制度創設が「貧富の差」の拡大につながると懸念する声も聞こえそうだ。