「貧富の差」の拡大につながる懸念
そこで金融庁が考案したのが「ジュニアNISA」。祖父母や両親らが孫や子の名義で口座を開設して資金拠出と運用管理を行い、長期投資をしてもらおうというわけだ。年間の投資上限額は80万円、非課税期間は最長5年間で、18歳までは払い出しを制限し、18歳以降は自由に使えるというものだ。
安倍政権が2014年6月に閣議決定した日本再興戦略は「NISAの普及促進に向け、利用者のニーズを踏まえた施策の推進で投資家の裾野拡大を図る」とうたっており、金融庁は年末の税制改正でジュニアNISA創設を求める方針だ。英国では2011年11月、英国在住の18歳未満を対象とした英国版ジュニアNISAがスタートしており、金融庁は英国をモデルに制度創設を目指している。
証券業界はもちろんのこと、株価上昇を狙う安倍政権としてもジュニアNISA創設や年間投資上限額の拡大はウェルカムで、これまで麻生太郎財務相・金融担当相、甘利明経済財政担当相、菅義偉官房長官ら関係閣僚が前向きな発言を繰り返している。年末の自民党税制調査会の税制改正論議は消費増税が最大の争点だが、ジュニアNISA創設も隠れた焦点のひとつとなる。
ただ、ジュニアNISAで恩恵を受けるのは、高所得の祖父母とその孫ら限られた富裕層中心。消費税率引き上げの一方で行われる金持ち優遇策とも言え、制度創設が「貧富の差」の拡大につながると懸念する声も聞こえそうだ。