居酒屋チェーンの「和民」を運営するワタミの業績不振が止まらない。人手不足の解消がむずかしい店舗や不採算店舗を対象に、2015年3月までに102か店の閉鎖を決めた。
総花的なメニューがならんだ、従来型の居酒屋チェーンには、もうお客が集まらなくなっているということなのか。
「和民」「わたみん家」の客離れ、止まらず...
ワタミが2014年11月11日に発表した14年9月期中間連結決算によると、居酒屋事業の不振によって、売上高は前年同期比3.7%減の777億円。営業利益が10億円の赤字、中期純利益は前年同期の5億円の黒字から41億円の赤字に転落した。中間期の営業赤字は株式を上場した1998年度以降で初めて。中間配当も見送る。
通期(15年3月期)の業績予想も、11月7日に下方修正。100か店を超える店舗閉鎖に伴う損失を計上するなど、最終利益は30億円の赤字(14年3月期は49億円の赤字)になる見通し。当初の20億円の黒字予想から一転、2期連続で赤字となる。
業績悪化による経営責任を明確化。取締役と執行役員の報酬を10月から2015年3月まで、月10~31%カットすることも決めた。
長引く業績の低迷だが、その原因は国内店の9割を占める「和民」や「わたみん家」といった主力の居酒屋チェーンの「客離れ」にある。売り上げは消費増税の影響もあって夏ごろから大きく落ちており、同社でも新業態の「炭火焼き店 炭旬」や「TGI FRIDAY」などは順調に伸びているが、いわゆる従来型の居酒屋は「客が奪われている」(桑原豊社長)。
10月の国内外食(既存店ベース)の実績は、前年同月と比べて売上高で3.2%減(全店ベースでは10.2%減)。客単価では2.8%増えたが、客数では5.9%減。14年度は6月に12.5%減となるなど、7か月もマイナスが続いている。
こうした厳しい状況のなか、ワタミは客数の減少になかなか歯止めがかからず、店舗周辺のマーケットの回復が見込めない42か店について、追加撤退を決めた。これにより14年度中に閉鎖する店舗数は全体の15%にあたる102か店となり、15年3月の店舗数は554店となる見込み。
店舗の閉鎖について、ワタミは「既存店の客数が前年比で伸び悩み、新たな業態への転換を進めたほうがいいのか、閉店するのがいいのか、1店1店精査しました。その結果の閉鎖です」と説明する。
1店舗あたりの社員は増えている
そもそもワタミは、アルバイトを含めた社員の長時間労働など労働環境の改善と人手不足の解消のため、2014年度に60か店の閉鎖を計画していた。「アルバイトの不足は慢性的になりがちなので、その分社員を増やして対応していく体制に切り替えています」と話す。
その結果、2014年3月に1.86人だった1店舗あたりの社員数は、9月には2.09人に増えた。これを店舗の追加閉鎖などにより、15年3月には2.50人に引き上げ、人手不足を解消したい考え。国内外食事業の担うワタミフードサービスの清水邦晃社長は、2014年度の取り組みを振り返り、社員の労働環境の改善について、「1店舗あたり社員数は改善したが、まだ改善途上」とした。
一方、深刻な事態にワタミの創業者で参院議員の渡邉美樹氏(自民党)は、自身のフェイスブック(11月8日付)に、「国内外食の不振の件で、株主様をはじめ多くの皆様に御心配をかけています」としたうえで、
「『新社長がお店に来て深夜2時間一緒に働いてくれました』そうした声も届きはじめています。one for all , all for one (一人はみんなのために、みんなは一人のために)。彼のスタイルの経営がすでにはじまっています」
と、業績改善に向けた取り組みが、10月に就任したばかりの、明治大学のラガーマンだったという清水社長の手によって始まっている、と記している。
ワタミは、「たしかに清水社長はお客様や社員の声を直に訊くために、店に足を運んでいます。(渡邉氏は)おそらく清水社長が『現場主義』であることを言いたかったのでは」と推察。「それにより、客数減を解決する」という。
「和民」や「わたみん家」は14年下期に、メニューの1部を値下げ。また、手づくり感や素材感を生かしたメニューを投入することで集客を高める。
ちなみに、渡邉氏は「ラグビーは自主性を尊重するスポーツで試合中はスタンドからしか指示が出来ません。私もスタンド最前列から見守り応援し続けます」とも綴っている。