ビジネス総合誌「PRESIDENT(プレジデント)」に掲載されたスーツに関するコラム記事に、サラリーマンから異論が続出している。
読者に向けて「洗えるスーツは問題外」「新人は4万、係長クラスまでは4~10万円のスーツを」などとアドバイスしているのだが、サラリーマンの一般的な感覚とはあまりにズレたものだったようだ。
スーツの質がグッと変わる目安は「13万円」
コラムは2014年1月13号の「課長、部長になったらいくらのスーツを着るべきか」というもので、11月6日にはオンラインサイトにも掲載された。筆者はパーソナルスタイリストでファッションレスキュー社長の政近準子さん(49)。冒頭から「最初に申し上げたいのは『洗えるスーツは生涯着ないでください』ということ」と手厳しい。
洗えるスーツといえば、汗の臭いが気になる夏場でも清潔に保つことができ、その上クリーニング代いらずとあって、サラリーマンから熱い支持を受けている。紳士服専門店だけでなく百貨店も独自商品を投入するなど、人気ジャンルとして確立している。
だが、政近さんは「自宅で気軽に洗える素材のスーツが上質なわけがありませんし、自分の都合を最優先にした装いで現れる相手と真剣なビジネスをしたいと思えるでしょうか」と人気商品を切って捨てる。
役職別に「着るべきスーツ」の価格帯も提案している。政近さんによると、新人は4万円、係長クラスまでは4万~10万円、中間管理職・部長は10万~25万円、経営者・役員クラスなら25万円以上が目安だという。ただし高価格のスーツはしっかりメンテナンスする必要があるため、自身の職種に応じてケースバイケースで選ぶ必要があるとも説明している。
なお、4万円という額は「それなりによいもの」がある最低ラインだそうだ。またスーツの質が明らかに変わる目安は「13万円」だという。
「このご時勢に」「発想がバブルすぎてめまいがする」
一見同じようなデザインだからこそ、質感やディテールが全体の雰囲気に大きく影響するという主張は誰しも頷くところだろう。スーツはサラリーマンの「戦闘服」。上質なものを着るだけで一定の自信にもつながる。
とはいえ、多くのサラリーマンのお財布事情は厳しい。新生銀行の「サラリーマンのお小遣い調査」によると、2014年度の平均お小遣い額は3万9572円だった。2年ぶりに上昇したものの、1979年の調査開始以降、4番目に低い金額だ。昼食代も541円とワンコイン+消費税8%の水準。アベノミクスによる効果が一般のサラリーマンにはほとんど見られない現状では、スーツの出費はなるべく抑えたいのが本音だろう。
実際、記事を読んだサラリーマンからは
「これが出来るなら、みんな不況不況なんて言ってない」
「このご時勢に1着4万もするスーツをポコポコ買うヤツが新人でいるかっての」
「みんな、そんな経済的余裕があるのか?発想がバブルすぎてめまいがする」
「課長だけどUNIQLOスーツもどき上下1万ちょっとですが何か」
といった戸惑いの声がインターネット上に数多くあがっている。
「いいものを着るのに越した事はないけど課長だからン万円~という発想がもうダメ」「いくら服装が良くても体型が悪かったらカッコ悪い。だからファッションの話でそもそも論として体型を整えることに言及していないと信憑性が失せる」といった指摘もある。
多くの批判に晒されることになったが、コラム中には「最前線で活躍されているビジネスマンなら、スーツに投資して損はありません」という記述があることから、あくまで「プレジデント」読者向けで、一般サラリーマンへのアドバイスではなかったのかもしれない。なお政近さんのプロフィールページによれば、政近さんのメーンの顧客は、政治家や会社社長、管理職、起業家など「富裕層」とのことだ。