90年代にも「PKO」
実際、公的年金を使った株価対策は1990年代にも実施され、国連の平和維持活動を文字って政府の株価維持策(PKO=Price Keeping Operation)と皮肉られた過去がある。公的年金による株買い付けが一巡すると株価は下落に転じ、効果は長続きしないというのが当時の経験則。巨額の資金でも、マクロの経済環境や企業の成長性判断に基づく市場全体のセンチメントは変えることはできないためだ。
公的年金の積立金を、リスクの度合いが異なる対象にどう配分するかは、GPIFの最重要決定事項だ。株式の場合、国の財政が破綻して債務不履行(デフォルト)にならない限り元本が棄損することはない国債と違い、「予期できない事態で相当な損失を抱え込むことになりかねない」(藤戸則弘・三菱UFJモルガンスタンレー証券投資情報部長)という指摘は専門家にも多い。運用のプロが政治の介入を受けることなく、年金の将来のためだけを考え、判断することへの国民の信頼が前提になるのだ。
楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏(経済評論家)が楽天証券のホームページでGPIFの株式運用の問題点を指摘している。山崎氏は「GPIFが薬品会社の株を保有することを考えてみてほしい。新薬などを認可することも、GPIFの運用を認可するのも厚労相の権限なので、いわゆる『利益相反』が起きる」と話す。
GPIFは11月4日、組織改革を議論する作業班の初会合を開いた。塩崎氏の強い意向を受け、政治からの独立性を確保することやリスク管理を強化することが焦点だ。だが、次期次官候補の呼び声も高い香取照幸年金局長ら同省幹部は監督権限があいまいになることを理由に強硬に反対しているとされ、改革が尻すぼみに終わる不安も指摘されている。