23時になっても「『命令違反』の横見出しが、所員を責めているように読める」と指摘
23時頃には、記事の語句や言い回しのチェックを担当する校閲担当者が、見出しに関する権限を持っている紙面のレイアウト担当者に対して、
「『命令違反』の横見出しが、所員を責めているように読めるので『書き換えるべきではないか』」
と注文したが、レイアウト担当者は、
「第二、第三のスクープがある。今日は書いてないこともあるようだ」
と回答。その結果、5月20日の東京本社最終版の1面は「所長命令に違反原発撤退」の横見出し、「福島第一 所員の9割」の縦見出しに決まった。
PRCの見解では、誤報をチェックするあらゆる機会を逃してしまった原因のひとつとして、取材チームをめぐる「自信と過度の信頼も影響している」と総括している。
「吉田調書を入手し検討した取材記者たちは福島原発事故の取材に関しては自負があり、2人だけでの仕事にこだわり、他からの意見を受け付けない姿勢がみられた。その結果、専門性の陥穽(編注:かんせい=おとしあな)にはまった。担当次長(編注:担当デスク)も局内で高い評価を受けていた。GE(編注:ゼネラルエディター=編集責任者)、部長らは、そうした取材記者2人と担当次長の3人のチームを過度に信頼し、任せきりの状態だった。部長とGEがその役割を的確に果たさなかったというほかない」