当番編集長も「吉田調書」閲覧を断られる
記事が載る前日の5月19日午後には、大阪本社が
「『命令』ではなく、『指示』ではないか」
と質問。担当デスクは、
「他にも支える取材資料があり、間違いない」
などと回答した。東京本社の当番編集長は、吉田調書の現物を見せるようにデスクに求めたが、デスクは秘密保持や分量が多いことを理由に断った。
大阪本社内ではその後も記事に対する疑問が相次ぎ、20時過ぎに東京本社に疑問点を改めて伝えたが、東京本社側は元々の見出しに問題がない旨を回答した。大阪本社では「所長指示通らず原発退避」という見出しを検討したが、結局は東京本社と足並みをそろえた。ただ、東京では2面に掲載された
「吉田所長の指示は、構内に線量の低いエリアがなければ第二原発も視野に入れて退避せよというもので、第二原発への一時退避は指示に違反していない」
という東京電力のコメントを、大阪独自の判断で1面に引き上げた。
疑問の声は東京本社でも上がっていた。22時ごろ、記事を出稿した特報部の部員が早版の大刷りを見て「現場は混乱していたのでは。現場の声を入れた方がいいのでは」などと提案したが、記事を執筆した記者2人が修正を受け入れなかった。