1970年に日本航空機「よど号」をハイジャックし、現在北朝鮮・平壌に住む容疑者グループが始めたツイッターに、批判が高まっている。
日本人拉致事件への関与が疑われているだけに、風当たりは強い。「よど号」を知らない世代が、インターネット上でどれほど関心を寄せるかも微妙だ。
「拉致疑惑をはねかえし日本への帰国をめざして頑張ります」
「よど号グループ」のツイートは、2014年10月3日に始まった。北朝鮮ではツイッターが使えないため、日本の支援者に文面をメール送信して投稿してもらっている。第1号は小西隆裕容疑者のものだ。北朝鮮に43年間とどまり、なぜ日本に戻らないかを今後話していくと予告した。赤木志郎容疑者は「すでに66歳ですが、拉致疑惑をはねかえし日本への帰国をめざして頑張ります」とつぶやいた。有本恵子さんを拉致した実行犯として指名手配されている魚本(旧姓・安部)公博容疑者も、拉致問題について話していくとしている。
ツイッターアカウントを開設するいきさつを、11月2日放送の「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ系)が紹介した。支援者が平壌を訪問し、グループの面々にツイッターについて講義して使い方を説明。グループのリーダーを務める小西容疑者は、「(ユーザーは)何でも聞いて、言ってください。何でも受け止め、答えます」と明言。また支援者から「20~40代前半は共感をもてる可能性が大きい」と聞いた若林盛亮容疑者は「固定観念を持って若い人を見るのではなく、我々についても固定観念も持たずに見てもらう」と応じ、期待をにじませた。
若い世代の利用者を意識したのだろうか、若林佐喜子容疑者は自身が北朝鮮在住30余年ということに「『じぇじぇ!!』ですよね」と少々おどけた様子を見せた。森順子容疑者は、2013年に刊行されたよど号グループの手記をちゃっかり宣伝している。アカウント名につかわれた「yobo_yodo」とは「ヨボヨボのよど号グループ」という意味だそうだ。
くだけた調子で親近感を演出しようとしたのかもしれないが、少々逆効果だったようで、ユーザーからは「能天気ですね。拉致に対する犯罪意識が希薄で不愉快です」と厳しい反応が返ってきた。「無罪帰国はあり得ない」「とっとと日本に来い。罪を償え」と憤る人もいれば、「めでたく地上の楽園に行けたんだから帰国なんて考えなくても良いのでは?」と突き放す声もある。グループの主張や立場に理解を示す意見は見られない。
帰国しないのは「少々深い事情があるのです」
現在、北朝鮮にとどまるグループは6人。いずれも国際手配されており帰国すれば逮捕となる。このうち魚本容疑者に加え、森容疑者と若林佐喜子容疑者には1980年に消息を絶った石岡亨さんと松木薫さんを北朝鮮に拉致した疑いがもたれている。
「バンキシャ!」のなかで小西容疑者は、よど号ハイジャック事件について自分たちが「誤りを認めて謝罪しないとだめ」と明言している。だが拉致容疑については全面否定だ。魚本容疑者も「全くやっていない」と語気を強めた。旅行先で石岡さんと1枚の写真に収まっていたふたりの容疑者も、「偶然出会って撮ったに過ぎない」と関与を認めていない。
よど号グループのツイッターアカウントには、ウェブサイトへのリンクが張られている。支援者が運営するサイトだ。ここに小西容疑者が11月6日に書き込んでいる。「いつも仲間とともに日本を思い、日本に帰ることを考えていますよ」としつつ、帰国しないのは「少々深い事情があるのです」と言葉を濁している。身に覚えのない日本人拉致の容疑で手配されているのだから、帰国しようにもできないという主張のようだ。ただ少なくともハイジャックという罪を犯しており、本人たちも認めているのに帰国して償わないのだから、周囲から理解を得られなくても仕方ないだろう。
ツイッター開始後1か月でのフォロワー数は約3500人。単純比較はできないが、アカウント開設初日で数万フォロワーを集める芸能人がいることを思うと、爆発的に話題になっているとはいいがたい。実際に投稿の中には、「よど号事件はテレビで見た世代ですがもう詳細は忘れました」と時代を感じさせる内容もあった。次回のツイートは11月中というが、月に1度のスローペースで世間の関心を繋ぎ止め続けられるかは疑問だ。