韓国人の男性歌手が、日本への入国を許可されず帰国したと憤っている。島根県・竹島を訪問して公演を開いたことが理由との主張だ。
日本側は詳細を明らかにしていないようで、冷え込む日韓両国の新たな火種になる恐れがある。ただし前提として、外国人の日本への入国は権利として認められているわけではない。
入国審査官が審査し上陸を許可した場合に限る
韓国人歌手のイ・スンチョルさんは母国のみならず、日本でも2006年に「RUI」の名でデビューし、人気ドラマのエンディング曲を歌うなど活動していた。複数の韓国メディアによると2014年11月9日、東京・羽田空港に到着して入国審査を受けたが、入管職員が詳しい説明をしないまま4時間ほど待機させた。理由を尋ねると「最近出た記事のため」と言われたが、これはイさんが8月に竹島を訪問し、合唱団と共に公演した模様が報道されたことを指しているそうだ。記事ではこの行為を日本側が問題視し、入国させなかったのではないかと結論づけている。
法務省が2014年3月18日に発表した統計によると、2013年に日本上陸を拒否された外国人の数は2859人。国籍別では韓国が683人で最多だ。理由で最も多いのが「入国目的に疑義のある事案」で56.7%、次いで「上陸拒否事由該当事案」が25.1%となっている。イさんも、いずれかに該当したのだろうか。
イさんが「不当な仕打ちだ」と入管職員に抗議すると、今度は過去に大麻を吸引して拘束されたことを持ち出されたという。だが、事件後に日本には15回訪れ、いずれも入国に問題はなかった。今回だけ許可されないのは納得できないと反発した。結局入国を諦め、そのまま韓国に戻ったそうだ。
出入国管理及び難民認定法(入管法)5条1項に、外国人の上陸を拒否する理由が14項目列記されている。アディーレ法律事務所のパートナー弁護士、篠田恵里香氏に詳しい解説を求めた。大前提として、外国人は日本に入国する権利が保障されているわけではない。入国審査官が審査した上で上陸を許可した場合に限り、入国できる。政治的な思想や活動によっての上陸不許可事由には同11~14号が該当するが、イさんのケースは同14号に書かれている、「前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」が該当するのではないか、と説明した。