トヨタ自動車が、下請けメーカーから調達する部品について、2014年度下半期(2014年10月~2015年3月)は購入価格の引き下げを要求しないことを決めた。
トヨタ本体が円安の恩恵を受け続けるなか、数万社に及ぶ取引先に業績改善の一部を還元する。円安は原材料高などで中小企業の経営を圧迫するとも指摘されるなか、サプライチェーン(供給網)を強化しグループの競争力を底上げする。
円安による利益の上積み期待
トヨタの下請けはトヨタに直接納品する「ティア1」、そこに納品する「ティア2」......と、4~5層程度の厚みがある。トヨタはこのうち主要な「ティア1」メーカー約450社で構成する「協豊会」メンバーを中心に年に2回、部品の価格交渉をしている。今回は9月に行った今年度下半期の交渉で部品値下げ凍結が決まったもので、一律に値下げを見送るのは極めて異例とされる。もともとは平均1%弱程度の値下げで調整が進んでいたが、円安の恩恵を受けにくい一部メーカーから不満の声があがったことも凍結にいたった要因という。
2014年3月期のトヨタの連結販売台数911万台のうち、日本は236万台と26%程度に過ぎないが、下請けメーカーは必ずしも海外進出が進んでおらず国内事業が中心で、円安を重荷に感じる取引先も少なくない。来年春の統一地方選に向けて「地方創成」を掲げて担当大臣まで置く政府が、円安による中小企業の経営圧迫を注視していることを踏まえて、「政府に言われる前に手を打った」(トヨタ関係者)との見方もある。
足元では、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和策を終了する一方、日銀が追加緩和に踏み切ったため、一段と円安が進んでいる。この直近の円安傾向がまだ反映されていない、11月5日に発表されたトヨタの2014年9月中間連結決算(米国会計基準)も、9月までの円安の恩恵を受けて過去最高の営業利益を計上した。国内販売は4月の消費増税前の駆け込み需要の反動減の影響が長引いて足踏みしているが、米国を中心に海外販売が好調だった。円高に大きく反転する材料は当面、見当たらず、トヨタは2015年3月期を通じて円安による利益の上積みが期待できる。