中国に詳しい識者「むしろ中国が譲歩した」
一方、中国に詳しい識者らからは、今回の合意文書はむしろ、中国が日本に譲歩した結果だとする見方が出た。
台湾中央研究院の副研究員で北京大学客員教授も務めた林泉忠(リム・チュアンティオン)さんは、中国語のブログで、「強情な安倍がついに中国に向って頭を下げた」との声が中国で多いが、日本は譲歩したとは言えないと指摘した。日本は、中国の監視船が尖閣の海域に度々入ってくるため、危機管理メカニズムを提案していたが、中国はずっと拒否し続けていた。しかし、中国は今回これを受け入れたことになり、かえって中国が譲歩したことになると書いた。
中国出身で拓殖大学客員教授の石平(せき・へい)さんはツイッターなどで、林さんのブログ内容を紹介したうえで、同じように中国が譲歩したとみていることを明らかにした。その理由については、安倍首相がAPEC首脳会議でフィリピンやベトナムにおける中国の海洋侵略を厳しく批判すれば窮地に立たされるため、安倍首相の言動を恐れて懐柔するしかなかったからだという。日本が譲歩したとの主張は、中国メディアの根拠のない自己宣伝である「勝利宣言」をもとにしているとして、「まったく根拠がない」と断じている。
日本のネット上でも、日中の合意文言を巡って、意見が割れている。
「なし崩しに中国のいいなりになっていく」「日本固有の領土って言っても国際社会には通用しなくなった」といった批判が出る一方で、「尖閣の事で日本がいつ譲歩したんだよ(笑)」「外交的には日本の完全勝利」といった擁護もされている。
なお、日本政府関係者では、石破茂地方創生相が読売テレビの番組で、「我々は領土問題があることを認めたわけではない。日本の姿勢は全く変わらない」と説明していた。