シンガポール、台湾、香港などアジア系の外資系投資会社が東京中心部の高級オフィスビルを相次ぎ高値で取得している。中国・香港の不動産市場に高値警戒感がくすぶる一方、円安で東京市場の資産が相対的に割安になっており、運用資産に組み込む日本の不動産の割合を高めている事情があるとみられる。
競合する国内の不動産投資会社やリートなどは提示額で競り負けている構図。日本側の関係者か らは「アジア系ファンドが東京のオフィスビル市場にバブルを波及させかねない」(運用会社社長)と警戒する声も上がっている。
「別のロジック」で売買が動く
東京・千代田区のオフィスビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」(延床面積8万1692平方メートル)の取り引き情報が流れた2014年10月21日。大和証券系リートの幹部は「(外資は)別のロジックで動いているとしか思えない」とつぶやき、首を振った。
東京駅と直結する超優良物件として関係者の注目を集めた同ビルを取得したのはシンガポール政府投資公社(GIC)。関係者によると取得額は1700億円強(オフィス部分6383平方メートル)とみられ、みずほ銀行が今年3月に本店ビルとして取得した大手町タワー(1782億円で取得)と並ぶ今年最大規模の売買となった。関係者は「ビルの評価額から判断すると、投資額から得られる想定利回りはせいぜい年2~3%だろう。日本のリートでは5%以上が通常で、我々では到底はじき出せない金額だ」(大和証券系リート幹部)と話す。
同ビルの取得には多数の日系投資会社なども動いたが、ある幹部は「当社が仲介会社に提示したのは約1300億円。GICの取得額の根拠はまったく理解できない」と驚く。
取得額の最大の決め手になるのは、オフィスビルの今後の賃料相場の動向をどう読むかだ。ビルを保有する投資会社などは、テナント企業から得られる賃料収入が利益や投資家への配当の原資になるためだ。