メルセデス・ベンツ日本は2014年10月20日、愛知県豊橋市に設けた「豊橋新車整備センター」で、輸入し陸揚げした乗用車を顧客に直接納車するサービスを始めた。
輸入した新車を同センターで整備・点検し、ナンバープレートまで付けてしまう。国内では4月の消費増税後は新車需要が鈍ったまま。輸入車も影響を免れず、あの手この手で需要を掘り起こすのに躍起になっている。
購入した顧客が乗って帰れるのが特色
ベンツが始めた「購入した顧客が乗って帰れる」サービスは「デリバリーコーナー」と呼ばれる。欧州各国で導入されており、日本でも規制緩和によってこのほどベンツが初めて認められた。10月20日の初の納車式では、第1号となった浜松市の会社社長(48)に最高級セダン「Sクラス」の特別仕様車が引き渡された。
ベンツのデリバリーコーナーは愛知、岐阜、三重、静岡の4県のナンバーを対象に開始。1年程度かけて全国に拡大するという。販売する側にとっては輸送コスト削減などのメリットがある。利用する顧客はベンツならベンツというブランドのファンであることが多く、「陸揚げほやほや」の新車を手にすることが喜ばれると見られる。欧州では独フォルクスワーゲン(VW)の工場などで新車を受け取るデリバリーコーナーがブランドへの親近感を持ってもらう取り組みとして広がっており、顧客に受け入れられているという。
欧州勢は日本が得意とする先進安全技術もアピール
ベンツの陸揚げ拠点の豊橋市は地域活性化につなげる狙いから、全国から車を受け取りに来た人に高速道路代や宿泊費を補助する。周辺をドライブしてもらって海沿いなどの観光地を盛り上げたい考えだ。今回、規制緩和の対象となったのは豊橋市の三河港だが、今後全国に広がる可能性もある。
欧州勢はこのところ、日本メーカーが得意とする先進安全技術もアピールしている。
VWは14年8月に発売した小型車「ポロ」の新型車に、前方車への追突回避を支援するシステムを搭載した。ポロは国内では1988年に販売を始めた主力車。輸入車の「カー・オブ・ザ・イヤー」なども受賞し、幅広い年代に支持されている。今回の新型車は、前方車を検知するミリ波レーダーを全車に搭載。衝突の危険を警告したり、自動的に加減速して車間距離を調節したりする機能を備えている。ギアをバックに入れるとモニターに車両後方視界が写し出される「リヤビューカメラ」も初めて搭載した。そのうえで価格は223万円からと抑え気味の価格設定としたあたりに、VWの本気度がうかがえる。
安全運転を支援する「ステアリング(操舵)アシスト」導入
ベンツが7月に発売した新型Cクラスも、安全運転を支援するシステムを強化したものだ。特徴の一つが「ステアリング(操舵)アシスト」。前方車を認識して適切な車間距離を自動的に保とうとするだけでなく、前方車両を車線のカーブと一体でとらえることでハンドル操作も補助してくれる。このため運転者の疲労も軽減されるという。
欧州勢は電気自動車(EV)でも国内市場を攻める。VWはこのほど、主力の「ゴルフ」と小型車「e-up!(イー・アップ)」の2車種でEV版を2015年に発売すると発表した。海外大手は独ダイムラーの「スマート」EV版が国内で先行していたが、独BMWが小型EV「i3」を今春、国内で発売。VWの参入でドイツメーカーのEVが国内市場にほぼ出そろう。
14年4月の消費増税後、輸入車(日本メーカーの「逆輸入」除く)も需要が落ち込んで月間販売は前年割れが続いた。9月に初めて前年同月比3.4%増と水面上に浮上したものの、力強さには欠ける。あの手この手で日本市場攻略を図るドイツ勢の動向は、国内メーカーも注目している。