交通トラブルからドアにしがみつかれ、会社員男性(45)が驚いて車を急発進させた結果、警視庁に殺人未遂の現行犯で逮捕された。詳細な状況は不明なものの、ネット上では、男性の逮捕に疑問の声が相次いでいる。
「すごい剣幕で降りてきて、運転席のドアにしがみついてきたので、怖くて車を発進させてしまった」
「ドアにしがみつく方が悪い」「恐怖を感じたんだろうな」
報道によると、逮捕された男性は、警視庁町田署の調べにこう供述したという。
トラブルは、東京都町田市内の都道三叉路で2014年11月5日午後に起こった。NHKなどの報道では、ワゴン車を運転していた男子大学生(23)は、対向して来た男性の乗用車に進路をふさがれ、クラクションを何度も鳴らした。そして、文句を言おうと車を降りて、供述のような状況になったという。
大学生は、しがみついた車から振り落とされて、体の一部を引かれた。約10メートル引きずられた後、病院に搬送されたが、頭を強く打つなどしており、1時間余り後に死亡が確認されている。町田署では、殺人容疑に切り替えて、男性を7日に送検するという。
このニュースが流れると、ネット上では、逮捕された男性を擁護する声が相次いだ。
「ドアにしがみつく方が悪い」などとして、男性については、「恐怖を感じたんだろうな」「これは正当防衛」「むしろ危険を回避する行動だ」と理解を示す声が上がった。殺人の疑いが持たれていることについては、「被害者の暴力から逃げる目的で車を発進させて、過失で被害者が死んだ過失致死だろ」といった反論も出ている。
もっとも、「これ完全に殺意あったろ」「警察に電話するのが適切な対処」といった指摘もあるが、男性をかわいそうだとする声の方が多い。
板倉宏教授「急発進させたのは正当防衛とは言えない」
殺人事件にまでなった交通トラブルについて、実際、その詳細はどうなっていたのか。
町田署に取材すると、報道とは違う状況が出てきた。
その説明によると、交差点で信号が青に変わったので逮捕された男性が車を進めようとすると、大学生のワゴン車が前をふさいでいた。ワゴン車の前が詰まっていたからだという。男性は、それでもクラクションを何度も鳴らしたため、大学生がワゴン車から降りてきてトラブルになったというのだ。
とはいえ、町田署では、大学生が亡くなったため、男性の供述だけしか分からないとしている。真相については、目撃情報などをもとにした今後の捜査を待つしかないようだ。
板倉宏日大名誉教授(刑法)は、男性が車を急発進させたのは正当防衛とは言えないと言う。
「車を急発進させれば、死ぬかもしれないという未必の故意があることになります。ですから、過失致死ということにはならないです。男性を殺人容疑で逮捕したからといって、おかしいとは言えません」
起訴されれば殺人罪になる可能性が大きいため、男性に執行猶予は付かず、懲役8年ぐらいの実刑判決になるのではないかとしている。ただ、法律上ではそうでも、何か釈然としない感じは残りそうだ。