東京・銀座の高級すし店「すきやばし次郎」の小野二郎さん(89)が2014年11月4日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で講演した。二郎さんは、マグロの乱獲などで水産物の安定確保が危ぶまれていることを念頭に、「将来、現在の材料ですしを(握ることが)できるということは、まったく考えられない」と述べ、すしの形は将来的に変化せざるを得ないという見通しを示した。
「次郎」は、14年4月の米オバマ大統領の来日時に安倍晋三首相と非公式の食事会が開かれた店としても広く知られている。実際に店を切り盛りする長男の禎一(よしかず)さんは「お出ししたものは全部召し上がっていただいた」などと話し、「2貫しか食べなかった」「半分残した」といった報道を強く否定した。
将来的には国産マグロだけでは店の食材をまかなえなくなる?
二郎さんは、店舗で使用している食材の安定供給が今後は難しくなるとの見方を示した。
「3年ほど前に『あと5年経ったら材料が全部変わってくるだろう』ということを若い者に言っていた。それが今、じょじょに現実になっていくような気がする。将来、現在の材料ですしを(握ることが)できるということは、まったく考えられない」
特に国産マグロの供給が減少しつつあることについては、
「これは事実だと思う。そのくらい今はマグロは少なくなっている。自分のいいのだけ狙っていても、なかなか手に入らないと思う」
と述べた。将来的には輸入マグロや養殖マグロも活用せざるを得ないとみているようだ。
「大統領はお出ししたものは全部召し上がっていただいた」
オバマ大統領の来店については、主に禎一さんが説明。オバマ大統領の来日1週間前に首相官邸から打診があったが、すでに予約が入っていることを理由に一度は断った。だが、官邸や外務省が「(20時の)閉店後でも構わないから」などと粘ったため、閉店後の貸切営業を引き受けたという。
禎一さんは、オバマ氏が食事する様子を、こう説明した。「次郎」では、通常は20貫3万円の「おまかせコース」が提供されることになっている。
「最初から(日米の)難しい事務的な話に入られたので、私どもは最初どうしていいか分からなかったが、『普通に出してください』と言われたので、父がいつもの普通のスタイル『おまかせコース』をお出しした。順番で食べていただいて、中トロを大統領が召し上がったときに、とても気に入っていただいたようで、ウインクしていただいた」。一通りお出しして、大統領はお出ししたものは全部召し上がっていただいた。『日米交渉』の話が長引いたので、味わって食べていただいたかはちょっと分からないが、『今で食べたすしの中では最高だ』とはおっしゃっていただいた。大統領は左利きで、お箸をとてもお上手に使い、きれいに召し上がった」
ここで、二郎さんも
「週刊誌に『2個しか食べなかった』って書いてあったていう...」
と発言。報道内容に反論したい様子で、禎一さんが
「私ども官邸とホワイトハウスの方から『何もコメントしてはならん』と伝えられていたので、今まで話せなかったが、お出ししたものはみんな召し上がっていただいた」
などと説明した。禎一さんの説明によると、オバマ大統領には18貫が提供され、「完食」したという。