ハミガキは「ファミリーユース」から「パーソナルユース」へ――。かつては家族全員が同じ歯磨き剤を使うことが一般的だったが、最近は個人個人が目的や好みに応じてそれぞれの歯磨き剤を選ぶ「ハミガキのパーソナル化」が進んでいる。
日用品メーカーも年代や性別に応じたさまざまな商品を発売しており、開発競争は加速している。
虫歯が減っても売れる
ハミガキの2013年の市場規模を見ると、250円未満の商品は前年比4%減に対し、500円以上1000円未満は7%増、1000円以上なら16%増。ハミガキ最大手のライオンが行った調査で、こんな数字が出ている。
かつては200円前後の手頃な商品が売れ筋で、家族が1つのハミガキを共有するケースが大半だった。しかし、最近では手頃な商品の売れ行きは減少し、代わりに価格の比較的高い商品が売れ行きを伸ばしている。「歯の汚れを落とすことが目的だったハミガキに、多彩な機能が加わり、単価が上がっているため」(日用品メーカー)とされる。
ハミガキの高機能化が進んでいる背景には、虫歯の減少がある。厚生労働省によると、日本国内の人口は減少しているにもかかわらず、日本人の成人の歯の総本数はこの四半世紀で約5億本も増えた。かつては「虫歯大国」とも呼ばれた日本だが、歯磨きの習慣や口内ケアに対する意識が広く根付き、虫歯はここ数十年で急速に減少している。この結果、消費者はハミガキに虫歯対策だけでなく、歯の美白や口臭予防、歯槽膿漏対策など、新たな要素を求める傾向が強まってきているのだ。