「営業部長」として熊本県の特産品を全国に売り込んでいるくまモンが、次に目を付けたのは鉄道だ。熊本県は九州の真ん中に位置することもあって、九州各地を結ぶ路線の多くが県内を通る。SLをはじめとする観光列車の数も多く、鉄道を重要な観光資源のひとつとして首都圏でPRに力を入れる。
その一環として、2014年11月1日には都電荒川線の車両を「ジャック」。抽選で招待された人にイベントの様子をソーシャルメディアで拡散してもらい、「鉄道王国くまもと」を売り込む。
「熊本から鉄道で九州全部に行ける」ことをアピール
熊本県は福岡、大分、宮崎、鹿児島の4県と陸路で隣接しており、熊本県では「熊本から鉄道で九州全部に行ける」ことをアピールしている。確かにJR九州が走らせている観光鉄道だけでも、博多駅と鹿児島中央駅を結ぶ九州新幹線、熊本から阿蘇に向かう「あそぼーい」、球磨川を横目に人吉を経由し、肥薩線のループ線やスイッチバックを楽しみながら鹿児島方面に抜ける「SL人吉」「いさぶろう・しんぺい」、熊本駅から天草方面に向かう「A列車で行こう」などがある。豪華列車「ななつ星」も、阿蘇を通るコースを設定している。
これらはすべて工業デザイナーの水戸岡鋭治さんがデザインを担当。14年10月には、熊本市交通局が水戸岡さんがデザインした新型路面電車「COCORO(ココロ)」の運行を始めたこともあって、熊本県と熊本市が共同で首都圏で鉄道のPR活動を行うことになった。
貸切電車は約30分かけて大塚駅~早稲田駅を往復
10月には特設サイト「鉄道王国くまもとだモン!」を開設。都内の書店でオリジナルブックカバーを配ったり、日比谷公園で行われた「鉄道フェスティバル」に出展するなどしてきた。12月31日まで熊本の特産品やくまモングッズをプレゼントするキャンペーンを行っている。そもそも、くまモンは2011年の九州新幹線全線開通を機に、関西圏へのPRを目的に登場したキャラクターという経緯もあり、鉄道のPRにはうってつけだとも言える。
11月1日には都電荒川線の車両を貸し切って、抽選で選ばれた40人を招待。募集はフェイスブックで行われ、約200人の応募があったという。車両は約30分かけて大塚駅~早稲田駅を往復。車内では熊本の鉄道に関するクイズ大会が行われ、正解者には銘菓「朝鮮飴」など熊本の特産品がくまモンから手渡しされた。参加者からは「くまモンかわいい!」といった黄色い声もあがり、スマホなどで次々にくまモンの姿を写真に収めていた。