2014年の日本シリーズは、守備妨害で決着がつくという前代未聞の戦いとなった。
日本一が決まる大舞台だったことを思うと、判定を下した審判のファインプレーともいえる。
だれもが「同点」と思った場面だった
ソフトバンク3勝1敗で迎えた10月30日の第5戦は終盤まで緊迫した息苦しい試合だった。8回裏、ソフトバンクが待望の1点を挙げた。ところが9回表に波乱が起きた。
阪神はサファテの乱れにつけ込み、3四球で一死満塁。一気に逆転の絶好のチャンスを迎えた。打者はこの日6番の西岡。すでに2安打を放っており、ファンの声援は一段と大きくなった。
西岡はカウント3-1から引っ張り、打球はゴロで一塁へ転がった。一塁手は捕球すると本塁へ送球して封殺。さらに捕手は一塁へ転送した。送球は走る西岡と野手が交錯したところへ。西岡に当たり、その間に二塁走者が三塁を回ってホームに滑り込んだ。
だれもが「同点」と思った場面だった。この直後、主審が西岡の走塁に対し「アウト」を宣告した。守備妨害でアウト、と判定したのである。阪神の和田監督は、勝利で喜ぶソフトバンクのすぐそばで抗議したが、受け入れられることはなかった。
西岡はライン外側に指定されている走路(スリーフットライン)の中に両足とも入って走らなければならないのに、内側(フェア地域)を走ったため、その走塁で野手が捕球し損なったとして妨害プレーとされた。
「何度も日本シリーズに出ているけれど、こんな幕切れは初めて」
胴上げされたソフトバンクの秋山監督がインタビューで開口一番こう言ったほど珍しい出来事だった。