公的資金の注入から11年を経て、完済が目前に迫るりそなホールディングス(HD)の動向に、改めて注目が集まっている。公的資金完済で経営の自由度が高まれば、地方を中心に取りざたされる銀行再編の核になり得るとの見方が強まっているためだ。
りそなの新たな成長戦略が金融界に激震を起こす可能性がある。
残る公的資金は1280億円
りそなは2003年に公的資金の注入を受け、実質国有化された。公的資金はピーク時に3兆円を超えたが、故細谷英二会長の主導で不良債権の処理やコスト削減に取り組み、経営健全化を進めた。2014今年7月には、国から公的資金(優先株)1960億円分を買い取り、国の議決権が消滅。残る公的資金は1280億円となり、経営体力からみても2018年3月期までとなっている返済期限の前倒しが十分視野に入る状況だ。
これまでは公的資金返済を最優先し、投資を控えてきたが、完済後はいよいよ「攻めの経営」に転じることになる。りそなは柱に据える個人や中小企業向けのリテールビジネスにいっそう力を入れる方針。M&A(企業の合併・再編)には「再編ありきではない」(りそな幹部)と慎重姿勢を示している。
しかし、金融界は再生を果たしたりそなを放っておきそうにない。信託機能を持ち、個人や中小企業経営者に幅広い顧客基盤を持つりそなは「高齢化でニーズが高まる資産承継分野が圧倒的に強い」(大手行幹部)。昨年、ソシエテジェネラル信託銀行(現SMBC信託銀行)を買収するまでグループ内に信託銀行がなかった三井住友銀行や、信託銀行最大手の三井住友信託銀行が「りそなに秋波を送り続けている」(別の大手行幹部)という。