テロリストを彷彿とさせるイメージビデオを流し、横浜や東京・渋谷に本物とそっくりな白くまの着ぐるみを連れまわすなどの奇抜なパフォーマンスは企業の「お騒がせ」プロモーションだった。
製品のPRであるヒントはあちこちに散りばめられていたが気が付かず、「やられた!」と脱帽する人もいた。
横浜や都内で白くまそっくりの着ぐるみを連れて歩く
プロモーションは約1か月半という期間で行われた。まず、2014年9月9日に「LALSH」という団体名でフェイスブックを立ち上げた。9月17日にはテロリスト集団を彷彿とさせる姿で、ユーチューブを使った「犯行声明」をした。ガスマスクのようなものを被ったロシア人と思われる6人の男が現れ、この世界は戦争、あるいは平和で成り立っている、とし、
「平和な日本に住んでいる人!私たちが与える恐怖で、あなたたちは平和な日常により感謝するようになるはずだ」
などと語った。そしてなぜか、日本のアニメキャラ「すーぱーぽちゃ子!」が好きであり、日本で「すーぱーぽちゃ子!」のコスプレをしている人たちは自分たちを見つけたら声をかけてほしいとも訴えて、飴のようなものを口に含んだ。
「私たちが与える恐怖」とは何なのかは明かしていないが、横浜や都内で白くまそっくりの着ぐるみを連れて歩く、ムチを持ったロシア人と思われる女性の姿が目撃されるようになった。10月8日には渋谷のスクランブル交差点に現れ、その周りにケータイで写真を撮影する人が集まるなどちょっとした騒動になった。その動画がユーチューブにアップされると、着ぐるみのリアルさで本物と勘違いする人もいて、
「よその国に来て、しょーもないことしてんじゃねーよ」
といった反発も出た。そして「LALSH」は、10月24日に新宿ですべてが明かされる、と宣言する。
「LALSH」とは何者なのか。実際はロシアのバンドか何かで、日本でデビューするためのセレモニーだろうという見方が多い一方で、万が一もあるため当日は新宿には行かないほうがいい、などと警告を発する人もいた。
動画閲覧が170万以上、テレビ取材も入って「大成功」
10月24日の新宿駅東口、スタジオアルタ前のイベントスペースでは茶番ともいえる小芝居が行われた。白くまが力士と戦ったり、白くまを捕獲しようとする特殊部隊に扮した一団も登場した。白くまは最後に自分で舞台に上がり、クレーンで高く宙づりにされた。そして舞台に掛けられている幕が下ろされると、そこにはモンデリーズ・ジャパンのキャンディー「HALLS(ホールズ)」の大きな看板があった。公式ホームページなどに掲載している「ホールズ」のPRポスターでは「ホールズ」を食べた男性の吐く息から白くまが飛び出している。白くまを宙づりにしたのはそれと同様なデザインにするためで、「LALSH」という団体名も「HALLS」のアルファベットを入れ替えたもの、というオチだった。
こうした一連の出来事が「HALLS」のプロモーションだったと全く気が付かなかった人が多くいて、
「やられた!」
と、素直に「HALLS」の仕掛けに脱帽する人もいるのだが、
「こんなお騒がせの宣伝って日本では許されるのか?」
「これでHALLSを買う気など起こらないし、誰得のイベントなんだ」
などと首を傾げる人もいる。
今回のプロモーションについてモンデリーズ・ジャパンに話を聞いてみたところ、14年10月6日にリニューアルした新ホールズを知ってもらうためで、「謎の集団はなんだろう?白熊はホンモノだろうか?」という話題を喚起するために一連の動画を公開したという。24日のイベントで「HALLS」の仕掛けだったことが判かり、
「消費者のみなさんにスッキリしていただくことを、ホールズのスッキリ感にかけている」
と説明した。今回のプロモーションは、公式フェイスブックに2000以上のLIKEを獲得し、ユーチューブに投稿された渋谷に白くまが出現する動画は170万以上の閲覧があった。24日のイベント当日はTV取材なども入ったとして反響が予想以上に多かったと明かしている。