アパレル大手の三陽商会が、2015年6月末の英高級ブランド「バーバリー」のライセンス契約終了後の対策を打ち出した。後継として、新ブランド「マッキントッシュ・ロンドン」を立ち上げ、来年秋から展開を開始するというもので、三陽商会を支える主力ブランドだったバーバリーの穴埋めを図る狙いだ。
ただ、大手百貨店などの売り場を確保できるかは見通せず、三陽商会にとっては引き続き厳しい状況が続きそうだ。
「虎の子」が自立
「マッキントッシュ・ロンドンを全国にあるバーバリーの売り場に取って代わるブランド事業にしたい」
三陽商会の杉浦昌彦社長は2014年10月15日、新ブランドの試作品を紹介する記者会見で、力強く主張。新ブランドを基幹ブランドに育てたいという強い意欲を示した。
三陽商会は1970年から40年以上にわたり、日本国内でバーバリーの商品を販売してきた。同社にとっては「虎の子」ともいえる存在で、バーバリーの関連商品は同社の連結売上高の半分を占めてきた。しかし、英バーバリーが日本でのブランド強化を目指し、事業を自力展開する方針に切り替えることを決定、三陽商会などと結んでいる現在のライセンス契約を2015年6月末で打ち切ると通告してきた。英バーバリーは3年間のうちに日本での売上高を現在の4倍の約1億ポンド(約170億円)超に引き上げたいとしている。
追い詰められた形の三陽商会がバーバリーに代わる重要ブランドとして打ち出したのがマッキントッシュ・ロンドンだ。来年の秋冬ものから本格展開し、40代の男女を主要ターゲットとして、コートをはじめ、スーツやバッグなどを販売、2018年に200億円の売り上げを目指す。
「バーバリー」の集客力は大きい
三陽商会は、バーバリーで展開してきた全国の百貨店の店舗のほとんどをマッキントッシュ・ロンドンに置き換えたい考えだ。40年以上にわたる努力で必死に築いてきた優良な売り場を何としてでも確保したい考え。
だが、関連業界からは「ブランドを替えれば済むような単純な話ではない」(流通関係者)との見方は強い。ある百貨店関係者は「バーバリーを持っているからこそ、三陽商会の価値は高かった」と突き放す。百貨店側にとっては、それだけバーバリーの集客力は大きく、貴重な存在なのだ。杉浦社長は新ブランドの店舗展開について、「大手百貨店の感触はよく、『良いものを提供してくれ』という声が大きい」と述べ、百貨店の期待は高いと指摘した。しかし、百貨店にとっては、いかに大きな集客力を見込めるかが売り場提供の最大のポイントなのは言うまでもない。
「他のアパレル各社も、三陽商会が持っていた優良な売り場を狙うチャンスと見て活発に動き出している」(流通関係者)といわれている。三陽商会は新ブランドでいかにバーバリーを上回る魅力を出せるか。新ブランドの展開が始まる来年秋に向け、三陽商会の本当の力が試されるといえる。