ネット上で批判を受けることも多い香港出身のアグネス・チャンさん(59)をめぐる動きが、新たな局面を迎えつつある。アグネスさんは名誉棄損や著作権侵害とみなした書き込みについて、プロバイダーに対して発信者情報開示を請求し、書き込んだ男性を特定した。
男性は拉致問題に関連してテレビでコメントするほどの「大物」だが、ブログに謝罪文を掲載し「平謝り」だ。この件についてアグネスさん側は告訴を見送ったが、他のプロバイダーにも発信者情報の開示を求めており、影響が広がりそうだ。
他人のブログ、メルマガ、フェイスブックの書き込みを転載
アグネスさんは2014年10月23日、自らのブログに男性の謝罪文を男性の実名入りで掲載した。男性の謝罪文は9月23日付。アグネスさんのブログに掲載された謝罪文と同じ文章が、男性のブログにも10月3日に掲載されている。
謝罪文によると、男性は他人のブログ、メルマガ、フェイスブックの書き込みを転載し、それに自らの意見を述べる形式でブログを書いていた。問題の書き込みはすでに削除されているが、「アグネスさんと日本ユニセフ協会が募金をピンハネしている」といった事実無根の情報を転載した上で、アグネスさんらを批判したようだ。
問題とされたブログ記事は「楽天ブログ」と産経新聞の「イザ!」ブログに12年11月頃に掲載された。アグネスさん側の名誉棄損の申し立てを受け、楽天ブログは14年1月に楽天の判断で閉鎖された。男性はこのブログを廃止しようと考えていたこともあって、特に閉鎖された理由を楽天側に確認しなかったという。楽天は1月24日に、名誉棄損の申し立てが行われていることを知らせる「照会書」をメールで送っていたが、迷惑メールにまぎれてしまったのか、男性はメールに気付かなかった。7月28日になって「照会書」が郵送されてきて、男性は初めて事態の重大さに気づいたというわけだ。
「イザ!」は産経新聞が14年4月にブログサービスを終了し、自動的に書き込みも消えている。
プロバイダーに事実無根の書き込みの削除と、発信者情報の開示を要求
男性は「拉致被害者を救う会」と「日本会議」の山口長門支部長を務めている。14年8月3日にフジテレビで放送された「新報道2001」にも登場し、山口県で行われた特定失踪者問題調査会による現地調査についてコメントもしている。保守的な論調には自信を持っているかにも見えたが、謝罪文では、
「(転載元のブログの)驚愕の内容の為に配信をしたのですが、如何に他人様の記事を転載したにしても、 著しく名誉を傷つけた事実には弁解の余地がございません。真に申し訳なく深くお詫び申し上げます」
と平謝りだ。
アグネスさんをめぐっては、10月12日の「新報道2001」で、中国政府寄りの発言をしているもかかわらず中国国籍ではないことが明らかになり「安全地帯から発言をしている」などと批判が殺到したばかり。アグネスさんはブログで、
「引き続き、他のプロバイダーにも、事実無根の書き込みの削除と、発信者情報の開示をお願いしています」
「肖像権や著作権の侵害をはじめ、誹謗中傷や、デマを流し、無責任な文章の書き込みを止めない人物には、今後も徹底して責任を追求し続けて行きます」
と宣言しており、プロバイダーからの問い合わせを受ける人が続出するのは確実だ。書き込みをした人は、法的に争うか、書き込みを削除して謝罪するかを迫られることになる。