「災害に備えてトイレットペーパーの備蓄を」――。
経済産業省の呼びかけをニュース番組が報じたところ、「なぜ今?」「何かあるの?」と不安がる人が相次いだ。中にはスーパーまで買いに行った人もいた。何があったのだろうか。
ヤフー急上昇ランキング1位に「トイレットペーパー 備蓄」
2014年10月22日、夕方のニュース番組「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日系)は、経産省が災害時のためにトイレットペーパーを備蓄することを呼びかけていると報じた。トイレットペーパー生産の約4割が静岡県に集中しているため、地震などの災害で工場が被害を受けると、日本のトイレ事情に混乱が起こりうることを紹介する内容だった。
すると番組視聴者の中から、
「経産省がトイレットペーパーを備蓄しろって...不気味だね」
「何でも工場が静岡に集中しているからとのこと。えっ、えっ、静岡で何かあるん?」
「生産が、静岡に集中してて、もしそこが被災にあったら、こっちまで来ないって...それって、東海地震が来るってこと??」
などとツイッターには不安がる投稿が相次いだ。心配する声はネット上に拡散し、検索大手「Yahoo!JAPAN」の急上昇ワードで「トイレットペーパー 備蓄」が1位になるほどの勢いとなった。
騒ぎはネットだけに収まらなかったようだ。ツイッターを見ると、「おばあちゃんからすごい切羽詰まった電話がかかってきた」「おかんが『ニュースで国がトイレットペーパーの備蓄を呼びかけてるんだよ!』ってパニック起こしてた」という人も現れた。
さらには、「実家の母親慌ててドラッグストアにトイレットペーパーを買いに行った...」「早速買いに行った。けっこうな人が買ってた」という書き込みもあった。「オイルショックでも起きるのか?」という人まで出てしまっている。
9月1日の防災の日に合わせて発表したものだった
呼びかけの背景には何があったのだろうか。
取材に対し、経産省からは「これは9月1日の防災の日に合わせて発表したもの」という回答があった。
東日本大震災では被災地だけではなく、各地のスーパーなどでトイレットペーパーが不足する事態が起こった。こうした災害時に備えるよう、日常用のものとは別に1か月分の備蓄用を常備することをすすめるものだという。
発生の恐れがあるとされる東海地震について新たな観測結果や予知があるのかと、今回の呼びかけと結びつけて不安視する声があったことを伝えると、
「東海地震について具体的に何かが関係するのではなく、あくまで『もしもの時のために』備蓄をしておくよう、防災の日をきっかけにした一般的な呼びかけです」
という答えだった。番組ではこうした背景の詳細までは伝えていなかったためか、同省にも「静岡で何かあるのか」などと視聴者たちから問い合わせがあったという。
10月18、19日、東京・銀座で同省と協力して、トイレットペーパーの備蓄を呼びかけるイベントを行ったNPO法人「緊急災害備蓄推進協議会」によると、「経産省の呼びかけについて知っている人はあまりいませんでした」という。発表から2か月近くがたつが、認知はまだ深まっていないようだ。
同会は備蓄用に芯がなく、長巻でスペースを取らない新商品を開発し、販売している。この備蓄用をイベントで配布したところ、「街の人は足を止めて、話しを聞いてくれた。各家庭に備蓄してもらえるよう、これからさらにPRしていきたい」と話している。