景気対策と少子化対策がセットに
こうした流れがあるとはいえ、安倍内閣はなぜ今、「年功見直し」をことさら取り上げるのか。
根底には、今後の人口減少をにらんで、企業の生産性を上げ、成長力を高めることが不可欠という基本認識がある。これは中長期の課題ではあるとともに、来春の賃上げの条件整備になる。また、安倍首相が「子育て世代の処遇を改善するため」にも年功賃金見直しが必要との認識を示しているのは、賃金が貯蓄に向かいがちな高齢層から、お金が多く必要な子育て世代へ回るようにして、個人消費底上げという景気対策と、少子化対策の一石二鳥が狙いとされる。
さらに、「昨年のように企業業績の急回復が期待できないため、賃上げ一辺倒では政労使会議の成果を打ち出せない。12月の報告に中長期の課題を書きこみたいのでは」(大手紙経済部デスク)という見方もある。
成果重視の賃金体系には、①長時間労働を招く、②業績が悪化した時に賃下げしやすい――といった批判もついて回る。そもそも、どんな賃金体系をとるかは、企業ごとに労使で協議して決めるのが筋だ。それでも、グローバル化の時代に現行の仕組みが制度疲労を起こしているのも確かで、どのような雇用制度が望ましいか、政労使が議論することには意味がありそうだ。