年齢とともに賃金が上がる「年功序列賃金」の見直し論が急浮上している。政府と経済界、労働界の代表が賃上げや労働環境などについて協議する「政労使会議」(2014年9月29日)で、安倍晋三首相が問題提起したもの。
労働側は「年功序列だけを見て解消すべきだと言うのはちょっと乱暴だ」(連合の古賀伸明会長)と反発しており、来年の春闘に向け、賃上げとともに賃金体系見直しの議論がどう進むか、注目される。
日本型雇用システムの特徴
「政労使会議」で安倍首相は、政府が強力に賃上げをプッシュした今年の春闘を自賛した上で、「労働生産性の向上を図り、企業収益を拡大させ、それを賃金上昇や雇用拡大につなげていくことが重要だ」と、賃上げの条件を整える必要を強調。特に、「子育て世代の処遇を改善するためにも、年功序列の賃金体系を見直し、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切だ」と、年功賃金体系の見直しの検討を求めた。
経団連の榊原定征会長は「当面の課題は企業収益の拡大を図り、来春の期末手当を含め賃上げができる環境づくりをすることだ」と指摘するにとどまった。
一方、連合の古賀会長は「デフレ脱却には個人消費の喚起が不可欠だ。中小企業や非正規労働者の底上げがカギで、物価上昇に国民所得が追いついていない」と語り、賃上げを優先させるべきだと主張。会議後、記者団に「今の賃金体系は賃金や処遇に関し、労使で議論して決めたものだ」と、年功序列賃金見直し論に反論した。
若い世代の給与水準を抑え、中高年以降に増やす年功賃金は終身雇用とともに日本型雇用の特徴となってきた。企業は新卒を一括採用して仕事を覚えさせ、長く働き続けるほど賃金を上げていく。これが、多額の退職金制度と相まって、会社への帰属意識を高め、教育コストをかけて育てた社員を流出させない終身雇用を形成してきた。労働者側にとっては、将来の生活設計を描けることから、配置転換や異動を受け入れてでも働き続ける誘因になってきた。