インターネットで、「東京成長学校 明日の自分を作る学校」の公式ブログが話題になっている。
そこには「上司からの指導料2万円を給料日に振り込むのがツライ」と、東京に住む新入社員Aさん(女性)が相談を寄せているのだが、「これって、ホントなの?」「釣りだろ」と騒然となっている。
「上司の指導料を払う会社、最近増えているんですよね」
Aさんが勤める会社では、「給料日に上司からの『指導料』などを指定された口座に振り込むことになっています」という。
「建前上は社員が自主的にやっている」ということらしく、給料日に自宅に帰ってからインターネットバンキングを利用して、「上司の口座に1か月の指導料2万円」を振り込むそうだ。
さらには、社長への感謝の気持ちとして1万円、パソコンやネットワークの利用料5000円、机や椅子といった什器使用料3000円も支払わなければならない。しめて、月3万8000円もの支払いだ。
Aさんの初任給がいくらなのかは不明だが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、大卒初任給の平均は19万8000円(2013年)。3万8000円も社長や上司に支払ったら、「ツライ」のも無理はない。一人暮らしのAさんは1か月の生活費にも事欠き、実家から仕送りをもらっているという。
当然のように、Aさんは釈然としない。そこで東京成長学校に、「他の会社ではこういうのは一般的なのでしょうか。教えて下さい」と相談した。
ところが、もっと驚いたのはその答え。
「Aさんが勤めている会社のように、上司からの指導料を払う会社、最近増えているんですよね」
これには、おそらく多くの人が「ええっ、ホントなの?」と思ったに違いない。
そして、その理由についても書かれており、
「社員ひとりひとりに会計ファイナンスの感覚を身に付けさせるのが目的です。社員を成長させようとしている会社ならではですよね」
と、答えている。
勢い、Aさんに対して、「少し経済的に辛いかもしれませんが、今を乗り越えれば、きっと大きく成長できるでしょう」と、会社側には何の問題もないかのように、「耐えろ」「頑張れ」と、Aさんを応援しているのだ。
強制的であれば、「違法の疑い強い」
インターネットでは、
「これってパワハラの一種でしょうか? こんなもので成長など出来るようにはとても思えませんが」
「完全にブラック(企業)だわ...」
「3万8000円? すぐに労基署に行きなさい」
「金を取るなら、それなりの成果が出せない上司や経営者は部下から解雇されるべきですな」
「上司や社長がその振込分を申告してなければ立派な脱税ですよね」
といった具合だ。
また、「東京成長学校」にも、
「これ 釣りアカウントじゃないの?」
とのコメントが寄せられている。
とはいえ、実際に「上司に指導料を払う」会社など、存在するのだろうか――。
職場の違法状態をはじめ、若者の労働問題の解決を目指す特定非営利活動(NPO)法人「POSSE」の今野晴貴代表理事は、「このような上司への『指導料』の事例は思い当たらない」と話す。
ただ、入社と同時に研修会社の研修を受けることを義務付け、その分の研修費を払わせる事例は多々あるそうで、「研修会社では山籠もりなどの『精神研修』を受けさせられる」そうだ。
経営コンサルタントの大関暁夫氏は、「自由参加、自主参加とする研修は褒められたやり方ではないですね」と話す。「自由」と言いながら参加しないと評価が下がるなど、実際には強制参加の研修であるケースが少なくないからだ。加えて、外部研修の費用を社員が負担するケースは「あり得る」としている。
また大関氏は、正社員への「指導料」や「什器利用料」の請求は「常識的にはあり得ない」という。「指導料」を受け取った上司も、就業規則などの本業から派生する情報・ノウハウをもとにした「副業の禁止」にあたる可能性があり、処分を免れないからだ。
まして「強制」の事実があれば、労働基準法違反の疑いが強いとみられる。